「相次ぐCMの炎上 」には制作側の実情が


ビルの屋上でトランペットを演奏する女性。その背後から2人の女性が体ごとぶつかり、驚いた彼女はトランペットを口から放してしまう……。
一見、なんてことのないシーンだが、これが物議を醸すことになった。

問題となったのは、俳優・神木隆之介と女優・芳根京子が出演するアサヒ飲料・三ツ矢サイダーのCM「僕らの爽快」編。
このCMを見たトランペット奏者がTwitterで危険性を指摘し、その後に拡散されて、相次ぐ非難が続出したため、同社はお詫びとともにCMの掲出を取り止めている。

テレビで多くの人が目にするCMは影響力が強く、PRする商品などの販売促進に繋がる反面、内容が物議を醸して視聴者からのクレームにより企業イメージを損なうこともある。
実際、クレームなどがもとで放送取り下げやお蔵入りとなるケースも多い。
昨年に放送された資生堂のCMでは“25歳の誕生日を迎えた女性”に対し、「今日からあんたは女の子じゃない」と語る場面があり、これが“女性差別”だと一部の視聴者から非難が殺到。こうしたCM内での“性差別”に関するクレームは多いという。大手広告代理店のCMプランナーは語る。
「1970年代にはハウス食品のCMで『私作る人、僕食べる人』という言葉が、『料理を作るのが女性だと決めつけている!』と婦人団体から抗議があり、物議を醸しました。CM制作者による、男性目線の“女とはこういうものだ”という古い固定観念が批判の対象になったわけです。もちろん、制作者の考え方はそれぞれあって然るべきですが、今は“1億総クレーマー時代”。CMについても、細心の注意を払って制作に挑まなければすぐに炎上し、企業イメージを失墜させる一因にもなりかねません」

では、CMスポンサーはクレームや炎上リスクに備え、どのような対策が取られているのか?
CM制作段階で厳しいチェックも……
「CMを制作するにあたり、法律に抵触していないか、表現に問題はないか、法務部署はもちろん、リスクマネジメントに取り組む専門部署が中心になってチェックします。専門家に監修を依頼し、プロの厳しい目で穴がないか細部にわたって注意も払っています」 (前出のCMプランナー)
とはいえ、そうした万全の体制を敷いていたとしても、思わぬクレームが入ることもしばしばある。
2014年に放送されたキリンビールの缶チューハイのCMでは、着ぐるみのカエルのキャラクターが未成年者の関心をひき、飲酒に誘導しかねないと、アルコール問題を扱う団体から指摘を受け、放送中止に追い込まれた。
「そもそも未成年者に飲酒を誘導するかどうかの判断は非常に難しい。結果的に、問題の傷口が広がらないうちにキリンビールは幕引きをしましたが、クレームを言う側も、それを受ける側も過剰反応のような気がします」(同CMプランナー)

ネット上の声にクライアント企業も過敏に反応!?
こうした背景もあり、昨今ではCMを制作する現場は委縮しているという。
「実際には消費者一人ひとりがそのCMを見ていなくても、SNSによってクレームや批判ばかりが拡散され、いつの間にかそれがマス(=大衆)の声かのように形成されることもある。クライアント企業は当然批判やイメージダウンを避けたいので、広告代理店やCM制作サイドに細かな注文を出す。これでは、創作意欲が削がれ、制作現場が委縮してしまい、その結果、無難な作品しかできない。また、直接クレームがなくても、ネットで炎上したことを受けて過敏に反応し、CM自粛を検討する企業もあり、表現の自由が損なわれている観もあります」(CM制作会社スタッフ)
多様性が叫ばれる現代。
“小さな声”を社会がすくい上げることはもちろん大切だが、その一方で半ばイチャモンとしか思えない理不尽な声に振り回されるケースも多く、今後もこの潮流はますます加速していきそうだ。