藤井四段止めた 世代の意地


 ◇竜王戦決勝トーナメント2回戦 ○佐々木勇気五段 101手 藤井聡太四段●(2017年7月2日 将棋会館)

竜王戦決勝トーナメントで、藤井聡太四段(14)の連勝記録を止めた佐々木勇気五段(22)。若手実力派でスイス生まれのイケメン。棋界の系譜が同じ板谷一門の2人の熱戦は、今後続く“ライバル対決”の始まりを予感させた。

 “打倒・藤井”に執念を燃やした佐々木が連勝を止めた。

 「プレッシャーはあったが、私たちの世代の意地を見せたかった。壁になれたのは良かった」

 羽生善治3冠(46)や渡辺明竜王(33)に勝った経験もある若武者が、その実力を証明した。

 昨年5月に非公式戦でプロ入り前の藤井に勝っているが、次々と記録を更新する藤井に、並々ならぬ闘志を燃やしていた。藤井が連勝中の6月10日と、29連勝に臨んだ同26日に対局室に足を運び異例の“偵察”。藤井の戦法だけでなく、普段とは違い報道陣が殺到する対局室の雰囲気に慣れる狙いがあった。

 藤井に鋭い視線を向ける姿は「目力が凄い」とネット上で話題になった。同30日には、3月の非公式戦で藤井を破った永瀬拓矢六段(24)と手合わせ。「対策はかなりしてきた。努力が実って良かった」と胸を張った。

 スイス・ジュネーブ生まれ。1歳半までフランスに住み、帰国して埼玉県三郷市で育った。5歳で将棋を始め、小4の04年に小学生将棋名人戦で優勝。小4での優勝は渡辺以来10年ぶりの年少記録で「神童」として注目された。08年に史上最年少記録の13歳8カ月で三段に昇段も、15年に藤井が13歳2カ月で更新した。

 端正な顔立ちのイケメンで女性ファンを中心に人気急上昇。スーツ姿の棋士が多い中、和装で登場することもあり「和装が似合う」と評判の“和服王子”だ。対局室にマイお盆とマイカップを持ち込むなど、“周辺環境”にはこだわる。この日も開局前、カバンからお盆をおもむろに取り出した。

 実力と人気を兼ね備えた佐々木と、快進撃を続ける藤井。これまで数々のライバル同士が昭和、平成で名勝負を繰り広げてきたが、棋界に現れた新星2人の今後の対局も注目が集まる。天皇陛下が20年6月15日までに退位され、元号が改まる。この日の対局は、「新元号の名勝負」の始まりを予感させた。

 【将棋界主なライバル】

 ▼大山康晴―升田幸三 大山96勝、升田70勝。ともに木見金治郎八段の内弟子で親友のような関係。48年の名人挑戦者決定を懸けた戦い「高野山の決戦」、歴代最多の9度を戦った名人戦などが語り草。

 ▼大山康晴―中原誠 中原107勝、大山55勝。72年の名人戦、13連覇していた大山が中原と対戦。3敗して追い込まれた中原は、第6、7局とも振り飛車で臨んだ。大山の得意を逆手にとる意表の作戦が奏功。2連勝して逆転奪取した。

 ▼中原誠―米長邦雄 史上最多の対局数187戦で顔を合わせた。中原106勝、米長80勝(持将棋1)。79年の名人戦第4局、中原名人が打った「5七銀」は伝説の絶妙手と言われる。

 ▼羽生善治―谷川浩司 羽生103勝、谷川62勝。95年の王将戦は、史上初の7冠制覇をかけた羽生が谷川王将に挑戦。第7局、相矢倉の戦いは千日手が成立。最後は谷川が防衛。翌年、羽生がリベンジし7冠達成。

 《師匠「凄いこと」》佐々木の師匠、石田和雄九段(70)は、佐々木も通った千葉県柏市の将棋教室「柏将棋センター」で取材に応じ「連勝記録を弟子が止めたのは凄いこと。うれしい」と喜びを語った。佐々木は、幼稚園の頃から小学4年まで同センターに通っていた。「毎日のように教室に通う努力家だった。抜群の才能があり、凄い棋士になると思って、かわいがって育てた」と振り返った。「今までで一番、ハラハラ、ドキドキした。“良かったね”と声を掛けてあげたい」と笑顔を見せた。

■藤井四段の次戦相手!佐々木五段が「イケメンすぎる」
史上最年少棋士・藤井聡太四段(14)が6月26日、歴代最高記録となる29連勝を達成。彼の強さの秘密から出前を頼む店まで、連日藤井四段についての報道がなされている。そんな中にわかに注目されているのが、藤井四段が30連勝をかけて対戦する相手・佐々木勇気五段(22)だ。

6月26日も対局に臨む藤井四段の姿を、佐々木五段は対局室の隅でじっと見つめていた。24連勝を決めた6月10日も、対局室で藤井四段を眼光鋭く見つめる姿が確認されている。

この様子がワイドショーなどで取り上げられ、「目力がすごい」と一躍有名に。6月27日放送の「ミヤネ屋」(日本テレビ系)に出演した加藤一二三九段(77)も「ほんとに執念を感じますね。こういったことは、普通は今までなかったこと」とコメントしている。

そんな並々ならぬ執念に加えて話題となっているのが、その端正な顔立ち。「スイス・ジュネーブ生まれ」というプロフィールや和服姿で将棋を指す凛々しい姿なども相まって、ネット上では《2次元キャラのよう》《イケメンすぎる》と騒然。《予想外に沼だった》と佐々木五段の魅力にハマる女性も続出している。

だがイケメンながら、その実力は本物。16歳1カ月という若さでプロ入り。渡辺明竜王(46)や羽生善治三冠(46)を公式戦で破り、16年には将棋大賞で最多対局賞を獲得。勝率も7割を超えるほどで、過去には非公式試合でプロ入り前の藤井四段と対戦して勝利している。

「もし彼が30連勝を阻止すれば佐々木フィーバーがくる!」と期待の声も。2人の対決は7月2日。佐々木五段の執念は藤井四段の記録を止めるのか、鋭いまなざしにも注目だ。

■佐々木五段の勝負メシ
日曜日で選択肢が限られたこともあり、両対局者は昼夜2食ともJR千駄ケ谷駅近くのそば店「みろく庵」に注文した。14歳の進撃を止めた佐々木は昼に「肉豆腐定食モチ入り」(1050円)、夜は「ミニとんかつ定食」(1000円)でパワーを蓄えた。一方、藤井は昼食に「冷やし中華大盛り」(850円)、夕食には「若鳥唐揚定食」(850円)をオーダーした。

 混乱を避けるため、インターネットの中継では指さし確認でメニューを声に出さず、注文が通ってから明かされる「情報管理」が徹底された。

■佐々木五段「勝ちにいった」
【佐々木五段に聞く】

 ――対局を終えて

 「今回は結果が求められている勝負だと思っていたので勝ちにいった。内容を重視すると勝てない相手だと思っていたので積極的に勝ちにいった」

 ――対局前の準備は

 「(対局が)決まってから対策を立てては遅い相手だったので、できる限りの努力はして臨んだ。(注目を集める)この環境に慣れようと藤井さんの対局を何度か見に行った。それが今になっては良かった」

 ――世代的な意地は

 「私たちの世代を乗り越えられると、私たちがのみこまれてしまう気がした。大きな波ですけど、立ちはだかる気持ちで臨もうと思っていた。壁になれたのは良かった」

 ――実際に指した印象は

 「簡単に悪くならない。後手番でもついてくるし、どの形でも指しこなせる」

■藤井四段30連勝へ挑戦
最多連勝記録となる公式戦29連勝を達成した将棋の藤井聡太四段(14)は2日、30連勝をかけて竜王戦決勝トーナメント2回戦に臨む。

 3日発売の「週刊ダイヤモンド」8日号では、囲碁棋士でこちらも「天才」と呼ばれる井山裕太6冠(28)と対談。デビュー戦となった加藤九段との対局で勝ったことが、連勝記録を更新する原動力になったことを明かしている。「加藤一二三先生と対戦して勝ったことが大きかった。勝負の上でメンタルも含めて。凄く自信になりました」と語った。

 今後の進路についても言及。井山6冠は「自分の一番好きなことを職業にできる」幸せを最優先して、高校進学の道を選ばなかった。藤井四段は名古屋大教育学部付属中(名古屋市)に通い、学業と両立。「学校に行くと時間的な制約がかなり増えますので、そういった点で高校進学については自分の中で迷う気持ちというのはあります」と率直に話している