北朝鮮のミサイルが自国内に落下


米太平洋軍と韓国軍合同参謀本部は29日、北朝鮮が同日早朝に弾道ミサイル1発を発射したものの、間もなく爆発し国内に落下したようだと明らかにした。

韓国軍は、北朝鮮が午前5時半ごろに西部の平安南道北倉(ピョンアンナムドプクチャン)付近から弾道ミサイルを発射したようだと発表。米太平洋軍司令本部の報道官は、北倉(プクチャン)の飛行場付近からの発射で、北朝鮮領内を出なかったと説明し、北米への脅威にはならないと述べた。

ドナルド・トランプ米大統領は、「北朝鮮はミサイル発射によって、失敗はしたものの、中国とその高名な主席の意向に背く失礼な真似をした。悪い!」とツイートした。

北朝鮮からの発表は今のところない。

国務長官の警告

ミサイル発射の数時間前には、レックス・ティラーソン米国務長官が国連安全保障理事会の閣僚級会合に出席し、北朝鮮に核兵器開発を放棄させるため世界の協力が必要だと呼びかけた。

ティラーソン長官は、安保理が行動しなければ「破局的な展開」につながると警告し、「米国本土を攻撃する能力を北朝鮮が獲得するまで、おそらく時間の問題だ」と懸念を示した。

このため、米国は必要とあれば軍事力を行使すると長官は言明した。

ティラーソン氏は、北朝鮮に対する既存の国連制裁を安保理の理事国が十分に行使してこなかったと批判。とりわけ中国に対して、北朝鮮との通商関係を利用して影響力を使うよう促した。

しかし中国の王毅外相は、 問題解決の鍵を握るのは中国ではないと反論した。

王外相は軍事介入に反対し、「武力行使は(双方の)主張の違いを解決しない。むしろさらにひどい惨事につながる」と主張。「朝鮮半島の核問題は、対話と交渉で平和的に解決すること。この選択肢のみが、正しく、現実的で、実行可能だ」と付け足した。

王外相はさらに、米韓合同軍事演習の3年停止と交換に、北朝鮮のミサイル・核兵器開発を凍結させるという中国政府の提案を繰り返した。この中国提案について米政府はすでに、北朝鮮が核開発をやめるのが先決だと交渉を拒否している。

ロシアのゲンナディ・ガティロフ外務副大臣は、武力行使は「まったく容認しがたい」と批判しつつ、北朝鮮にはミサイル・核開発放棄を呼びかけた。

英国のボリス・ジョンソン外相は、「解決のいずれかの時点では」交渉も必要だが、まずは北朝鮮が核放棄に向けて「検証可能な進歩」を遂げる必要があると述べた。

国連はすでに、武器・燃料をはじめ兵器開発に使える様々な品目について、北朝鮮への輸出を禁止している。禁輸品目には、高価な宝飾品やスノーモービルなどのぜいたく品も含まれる。さらに昨年からは、北朝鮮に出入りする全貨物の検査が義務付けられている。

北朝鮮が発射したミサイルの破片を調べた新しい国連調査では、ミサイルには中国企業から入手した、もしくは中国企業を経由して入手した電子部品が使われていることが判明している。

米国は国連よりも厳しい北朝鮮制裁を実施しており、輸出入を全面禁止するほか、北朝鮮と関わる全ての組織・個人を制裁対象のブラックリストに載せている。

米政府は相次ぐミサイル実験と核実験再開が噂される状況で、空母打撃群を朝鮮半島へ派遣し、ミサイル迎撃システムの韓国配備を開始した。

北朝鮮はこれまでに、核弾頭を小型化して、米国本土を射程圏内に収める長距離ミサイルに搭載する技術を開発してきたとされる。

米国の公共放送ラジオNPRに、米国は北朝鮮と直接交渉する用意があるのかと質問されたティラーソン国務長官は、「もちろんこの問題をそのように解決できれば望ましいが、対話にふさわしいテーマについて話す用意があるのか、北朝鮮がまず決めなくてはならない」と答えた。

<解説>バーバラ・プレット・アッシャーBBC国務省担当記者

ティラーソン長官は、(1) 既存制裁の強化、(2) 新しい制裁の追加、(3) 北朝鮮の外交的孤立――を、国連に要求した。

そして長官は、米国がこの方針を強力に追究していく方針を示した。特に、北朝鮮の違法活動を支援する組織・個人への米国制裁を強化すると述べたことは、中国の金融機関への警告だったかもしれない。

長官はさらに国連加盟国に、北朝鮮との外交関係を後退させるか凍結するよう求めた。北朝鮮にとってカンボジアやラオス、マレーシアとの外交関係は有用なものだが、米国はこの関係を終わらせようとしている。

ティラーソン氏はこれに加えて、なぜ米国がこのように北朝鮮に厳しい態度をとっているのか、動機を説明した。米国は、自分自身の安全保障を懸念しているのだと。

つまり、本気なのだ。

◆数分で爆発か
韓国軍合同参謀本部によると北朝鮮は29日午前5時半ごろ、北朝鮮内陸部の平安南道・北倉一帯から弾道ミサイル1発を発射した。北倉から北東に向けて発射し、ミサイルは高度71キロまで上昇したが発射数分後に空中で爆発して失敗した模様だ。

AP通信は米政府当局者の話として、新型の中距離弾道ミサイル「KN17」の可能性が高く、発射数分後に爆発して日本海に落下したとの見方を伝えた。「KN17」は4月15日に平壌で行われた軍事パレードで初めて公開されたもので、米韓の専門家の間では北朝鮮が艦艇を狙うための「対艦弾道ミサイル」として開発を進めているとの見方が広がっている。北朝鮮は今月5日と16日にも新型弾道ミサイルの発射に失敗している。

 トランプ米政権は原子力空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島近海に派遣するなどして北朝鮮への圧迫を強めており、こうした圧迫への対抗策として新型弾道ミサイルの開発を進めている可能性がある。

 ◇トランプ氏ツイッターで非難

 トランプ大統領は28日、ツイッターに「北朝鮮は中国と習近平国家主席の望みを尊重せず、ミサイルを発射したが失敗した。悪いことだ」と投稿し、北朝鮮を非難した。

◆政府 北ミサイルに厳重抗議
29日の北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、日本政府は「断じて容認できない」(菅義偉官房長官)と強く非難、直ちに北京の大使館ルートで厳重に抗議した。

 米国の軍事圧力が強まる中で挑発行為に踏み切った北朝鮮の意図などについて分析を進める。安倍晋三首相は、外遊から帰国後にトランプ米大統領と電話会談し、今後の対処方針を協議する方向で調整に入った。

 防衛省によると、29日午前5時半ごろに北朝鮮中部の北倉付近から北東方向へ弾道ミサイル1発が発射され、約50キロ離れた内陸部に落下したもよう。菅長官は同日朝、首相官邸で緊急に記者会見し、「国連安全保障理事会決議などへの明白な違反だ」と強調。警戒監視に万全を期す方針を示した。

 稲田朋美防衛相は防衛省で記者団に、内陸部に落下した点や発射直後に空中爆発したとの情報があることに触れ、「失敗した可能性がある」と述べた。ミサイルの種類などは分析中だと説明した。北朝鮮の狙いについては、(1)新たなミサイル技術の開発(2)米韓合同演習への反発(3)北朝鮮非核化に関する安保理閣僚級会合への反発―を挙げた。

 防衛省幹部は、発射方向の延長線上に米国があることから、トランプ政権に狙いを定めた挑発である可能性を指摘。一方、別の政府関係者は「6回目の核実験に踏み出さないのは、圧力が利いているからだ」との見方を示した。

 日米首脳の電話会談は、首相が30日に帰国後、速やかに行われる見通し。自衛隊と米軍による連携や、中国により強い関与を促す外交努力について意見を交わすとみられる。政府は米国に加え、韓国や中国とも連携して北朝鮮に自制を求める。

 政府は今月、北朝鮮のミサイル発射が失敗した場合も幹部を官邸に緊急参集させる方針に転換。29日が初の事例となった。同日は麻生太郎副総理兼財務相や菅、稲田両氏らが出席して国家安全保障会議(NSC)も開催する異例の対応を取った。

◆米空母 朝鮮半島東海域に到着
米原子力空母カール・ビンソンが29日、朝鮮半島東の海域に入り、韓国軍との共同訓練を始めた。韓国海軍が明らかにした。

 海軍によると、韓米両軍は同日午後6時からカール・ビンソンを中心とする空母打撃群などによる訓練を開始した。韓国海軍からはイージス駆逐艦「世宗大王」や水上艦などが参加しているという。米軍は訓練に艦載機や駆逐艦、巡洋艦を動員。カール・ビンソンは約70機の航空機を搭載し、共に航行中の駆逐艦「ウェイン・E・マイヤー」と「マイケル・マーフィー」、巡洋艦「レイク・シャンプレイン」には艦対空ミサイルのシースパローや巡航ミサイルのトマホークなどが搭載されている。

 今回の訓練の主要目的は北朝鮮の弾道ミサイルと大陸間弾道ミサイル(ICBM)を探知・追跡することで、ミサイル迎撃に関する情報を共有しながらのシミュレーションが行われるとみられる。

 韓米はこのほか、機動・実射訓練や潜水艦の探知・追跡訓練も予定している。韓米両軍は訓練をいつまで行うかを明らかにしていないが、来週まで実施されるとみられる。

 北朝鮮はこの日午前5時半ごろ、西部の平安南道・北倉付近から弾道ミサイル1発を発射したが、数分後に空中で爆発し、失敗したとされる。専門家はミサイル発射について、国連安全保障理事会が28日に開催した北朝鮮核問題を巡る閣僚級会合とカール・ビンソン派遣を含む米国の軍事的圧力に屈しないという北朝鮮の意思を示すものと分析している。

◆北発射 新型の対艦ミサイル
北朝鮮が29日午前5時半ごろ、西部の平安南道北倉(ピョンアンナムドプクチャン)付近から北東方向に弾道ミサイル1発を発射したものの、失敗したとみられると韓国軍合同参謀本部が発表した。ミサイルは数分間飛行して北朝鮮内に落下。最大高度は71キロで、空中で爆発したとの見方もある。

 ミサイルの種類や性能などははっきり確認されておらず、米韓などが分析している。米CNNなどは、空母など艦艇を狙う新型の対艦弾道ミサイル「KN17」と推定されると伝えた。15日の北朝鮮の軍事パレードの際もKN17とみられる機体が披露された。朝鮮半島近海に入った米原子力空母カールビンソン率いる空母打撃群を牽制(けんせい)し、米国の圧力に屈しないという意志を示した可能性もある。発射は、国連安全保障理事会が北朝鮮情勢について閣僚級会合を開いた直後だった。

 菅義偉官房長官は29日の記者会見で「発射された弾道ミサイルは、(発射場所から)約50キロ離れた北朝鮮内陸部に落下したと推察される」と述べた。

 弾道ミサイルに関し、米太平洋軍は「北朝鮮領域を出ていない」と分析。北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)も「北朝鮮から発射されたミサイルは北米の脅威にはならない」との声明を出した。