限界に来た中国経済


中国の経済を見ると、今は安定しているようだ。しかし、もう少し長い視点で考えると不安な材料は多い。秋の党大会を控える中、習近平国家主席にとって、権力基盤の整備こそが最も重要な課題だ。国内の不満を抑えるために、年内の景気は財政政策によって支えられると見られる。

 問題は、財政頼みの景気回復が持続的ではないことだ。鉄鋼業界などでの過剰生産能力、民間部門を中心とする債務残高の増大や、シャドーバンキング問題をどう解決するかも不透明である。

 年内はよいとしても、来年以降の景気を支えることは、そう簡単なことではないだろう。中国政府が構造改革を進めるとも考えづらい。中長期的な景気のリスクは高まっていると考えられる。

中国経済のボトルネックは「人口問題」
 中国経済の先行きを考えると、様々なリスク要因が思い浮かぶ。その中で重要なのは、中長期的な経済がどうなるかだ。この問題を考えるとき、中国の人口問題は決定的に重要である。1979年から昨年1月まで実施されてきた一人っ子政策の結果、中国の生産年齢人口(一般的には15~64歳、中国では15~59歳)は2012年に、建国以来、初めて減少に転じた。

 言い換えると、2011年まで、中国では働き手が増え、いびつながらも社会全体に富が配分されることで経済が成長を遂げてきた。これは人口の増加が経済を支える人口ボーナスの時代といえる。2012年以降は一転して、働き手が減少して現役世代の負担が増えるなど、人口動態が経済の”重荷”となりつつある。中国は、この人口オーナスの時代に移行したと考えられる。

 この中で中国政府は、農村部の所得水準を引き上げ、内需の拡大を進めなければならない。すでに農村を中心に余剰労働量の供給は減少していると見られ、賃金は増加しやすい。成長率を維持するためには、構造改革による生産性の引き上げが急務だ。過剰な生産能力や債務のリストラは欠かせない。これは多くのエコノミストが同意している。それなくして経済の安定を図ることは難しい。

 しかし、中国共産党は、構造改革の結果として企業倒産や失業が増加し、社会の不満が上昇することを恐れている。なぜなら、国内の社会不安は、共産党の支配基盤を弱体化させるからだ。だから、構造改革が進まない。その代わり中国にとって、金融・財政政策を駆使して当面の景気安定をつないでいくことが現実的な対応策となってきた。

バブルを「乗り継ぐ先」はもうない
 2016年の春先まで、中国は金融政策を緩和的に運営することで、株式市場から不動産市場に投資(投機)資金を流入させて景気を支えてきた。これは、政策によって特定の資産のバブルを乗り継いできたことといえる。

 現在、中国政府は金融政策を引き締め気味に運営し、不動産バブルを鎮静化しようとしている。これは、新築住宅価格、固定資産投資の伸び率を抑制し、徐々に効果を発揮している。

 問題は、不動産からの資金シフトを促すターゲットが見当たらないことだ。足元、金融引き締めの影響などから中国の株価はさえない。それだけに、株式市場への資金還流を政府が促進する可能性はある。ただ、2016年年初の相場急落の際、当局がなりふり構わずに取引を停止させ、金融市場が混乱に陥ったことは記憶に新しい。

 バブルの乗り継ぎで景気を支えていくことは限界に差し掛かっているといえるだろう。構造改革の痛みを抑えるための財政支出にも限りがある。年初以降の景気が政府の計画に対して上振れ気味であることを考えると、景気が実力以上のペースで人為的に押し上げられている可能性もある。

 共産党の威信をかけて年内は何とかなるとしても、その後の景気をどう支えていくか、妙案が見当たらない。

 当面、中国政府は不動産バブルの膨張を抑えるために金融政策を引き締め気味に運営するだろう。この結果、信用リスクが高まり、銀行間の資金繰り悪化など、急速に中国の金融システムが動揺するシナリオは排除できない。バブルの乗り継ぎが困難と考えられるだけに、今後の中国がどのように構造改革を進め、経済基盤の強化に注力できるかが問われる。