★ 『ペーパータウン』

2015年。アメリカ。”Paper Towns”.
  ジェイク・シュライアー監督。ジョン・グリーン原作。
 アメリカの地図製作会社が違法コピーを防ぐために任意の一点に実在しない架空の町を作った。その存在しない町のことをペーパータウンと呼ぶらしい。
 ニューヨークの北にあるアグローというペーパータウンに行方不明になった女友だちがいるに違いないと思い込んだ高校生が自動車での冒険旅行に出かける物語。
 『さよならを待つふたりのために』が大ヒット(日本国内では小ヒット)した勢いで作られたらしき、ジョン・グリーン原作小説の映画化作品で、これはミステリーの方法を使ってあり興味深いが、アメリカ国内では期待したほどのヒットにはならず、そのせいか日本国内では劇場公開なし、ネット配信のみとなっている。

 主に18歳前後をターゲットにするヤングアダルト小説の映画化作品にしては結末の味が苦すぎることがヒットしなかった理由なのは明白だが、「奇跡は誰の身にも起こり得る」のではなく、「人生に奇跡など決して訪れない」ことが主題の映画は夢見がちな18歳の若者には酷すぎたのかも知れない。
    IMDb

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 ガンで亡くなった親族の想いを継承し医学部に入ってガン専門医になることを目指す高校生クエンティン(ナット・ウルフ)、『さよならを待つふたりのために』の周辺にいた人物っぽい設定がつながりを感じさせるが、ナット・ウルフは『きっと星のせいじゃない』で最も印象深いキャラクターだったアイザックを演じていた人物である。
 彼には物心ついたころから恋していた幼なじみ、マーゴ(カーラ・デルヴィーニュ)という少女がいたが、学園内カースト最下層のクエンティンと学園のトップに君臨して誰もが恋い焦がれているマーゴとの接点はとっくに失われていた。
 ある夜、突然彼の部屋を訪れたマーゴに、生まれて初めての大冒険となる手伝いをやらされたクエンティンだったが、マーゴはその夜を境に街から姿を消してしまう。
 マーゴの両親はいつもの家出だとみなして真剣に探そうともしないが、クエンティンはいくつかの手がかり、ウディ・ガスリーのレコードやウォルト・ホイットマンの詩集などから、「私を探して」というメッセージを読み取り、オタク仲間の友人たちと捜索活動を開始する。
 捜索の過程でマーゴの友人だった学園内トップ集団のゴージャスな女の子と仲良くなったりしながら、クエンティンはマーゴがすでに死んでいる可能性に思い当たる。マーゴはクエンティンに彼女の死体の第一発見者になってもらいたいのかも知れない。

 物語は前半でマーゴがいかにとびぬけた存在であったかを示すエピソードを並べて、学園内の男子が共有していたイメージ、大胆で知性に溢れた美しい女性マーゴを描写するが、次第に当のマーゴ自身がそのイメージに苦しめられていたことが判明してくる。
 物語の終わりはマーゴのイメージの破壊作業で、ロマンチックさの欠片もなくなるので、主人公クエンティンが自分たちの生活と地続きにつながっている感覚を味わえるが、映画にファンタジーを求める人々にとっては歓迎できない終わり方なのだろう。
 マーゴを演じたカーラ・デルヴィーニュは回想場面でときどき出てくるだけなのでより効果的に神秘的で実在感もあった。この先も生きていけばマーゴは画家やシンガーソングライター、詩人、ブロードウェイのスターなどに成り得ているだろう。何となくジョニ・ミッチェルの若いころはこんな感じだったに違いない、と思った。

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2016/7/3付 囲碁女流棋士ランキングBEST20

女流棋士ランキングのBEST20を以下に示します。      1 謝 依旻2 藤沢 里菜3 青木 喜久代4 鈴木 歩5 王 景怡6 知念 かおり7 矢代 久美子8 加藤 朋子↑+19 田村 千明↓△110 種村 小百合↑+511 加藤 啓子↓△112 向井 千瑛↓△113 桑原…

2016/7/3付 囲碁プロ棋士ランキングBEST50(2)

次に26位~50位までと、全体を通してのコメントを以下に記します。   26 金 秀俊27 山田 規三生28 蘇 耀国29 王 立誠30 今村 俊也31 片岡 聡32 趙 治勲33 鶴山 淳志34 溝上 知親35 秋山 次郎36 平田 智也37 淡路 修三38 中野 寛也39 清成 哲…

2016/7/3付 囲碁プロ棋士ランキングBEST50(1)

まずは、1位~25位までを以下に示します。  1 井山 裕太2 高尾 紳路3 山下 敬吾4 村川 大介5 河野 臨6 張 栩7 余 正麒8 一力 遼9 羽根 直樹10 黄 翊祖↑+111 結城 聡↑+112 許 家元↑+113 柳 時熏↑+114 依田 紀基↑+115 瀬戸 大樹↑+…

★ 『人生はローリングストーン』

2015年。アメリカ。”The End Of The Tours”.
 ジェームズ・ポンソルト監督。デヴィッド・リプスキー原作。
 ローリング・ストーン誌の記者で、無名の小説家でもあるデヴィッド・リプスキー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、若者の間でカリスマ的な人気を誇る気鋭の人気作家、デヴィッド・フォスター・ウォレス(ジェイソン・シーゲル)の出版記念ツアーに同行取材をする。
 その5日間の同行取材時の会話を録音テープを元に再現したドラマ。
 なぜこんな地味なドラマに需要があるのかというと、日本では全く無名ながら、デヴィッド・フォスター・ウォレスという作家はアメリカでは文学に関心のある人なら必ず一度は手にする”Infinite Jest”という分厚い著作でトマス・ピンチョン以降の最も重要な作家とみなされており、人々の関心を集める人物であるから、ということらしい。

 日本では初期の作品が翻訳されているだけで、その後の代表作は採算が合わないために未翻訳のままだが、文系大学生の部屋には必ずこの作家の本が転がっているというくらいにメジャーな存在らしい。Googleで検索すると、米語の読み書きが出来る人たちがちょこちょことエッセイや講演記録を訳していて、興味深い。
 特に2005年にケニヨン大学で卒業生を前に行ったスピーチには感動した。同じ年のスティーヴ・ジョブスのスピーチよりもはるかに素晴らしい。リベラルアーツ教育の重要性を語っているのだが、実感がこもった言葉で心に響く。

 この作品は、デヴィッド・リプスキーのもとへデヴィッド・フォスター・ウォレスが自殺したが何か知らないか、という連絡が届く場面から始まる。「そんな馬鹿な、あり得ないよ。きっとどこかの大学生のいたずらだろう。」と言うリプスキーだったが、どうやら自殺は本当らしいと知り、彼と過ごした5日間のことを回想する。
   IMDb

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 この再現ドラマを見ていると、デヴィッド・フォスター・ウォレスという作家が自殺という選択をした(2008年に46歳で逝去)ことはショッキングな出来事だったことが何となく理解できる。資本主義社会で生活することの意味を考え続けた人物で、多くの人の考えの深い部分に影響を与えていたようだ。
 物語は、偉大な作品の著者には非凡な何かがあるはずだと嫉妬や羨望の想いも含めて思い込んでいるリプスキーと、前衛的で難解な作風なのに通俗的なテレビドラマやアクション映画を愛するD・F・ウォレスとのちぐはぐで気まずいやりとりを痛々しく描き出す。
 ジェシー・アイゼンバーグとジェイソン・シーゲルの二人以外には数人しか出てこない旅行の映画でロードムービーだが、風景よりも二人の顔が映っている時間が多い。会話が中心なので仕方がないが台詞の量も多く、二人の俳優も苦労したに違いない。D・F・ウォレスの元カノ役のアンナ・クラムスキーという女優がなかなか良い。
 最後はセンチメンタルな感じで終わってしまったが、デヴィッド・フォスター・ウォレスという作家の存在を知ることが出来た点で有意義な作品だった。

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