ペッパーの今後は?


仕事をしないといけない-アプリ50種投入
 1万台以上が普及し「人と共存するロボット」の先駆者となったソフトバンクの人型コミュニケーションロボット「ペッパー」。法人向けの「ペッパー・フォー・ビス」の登場から1年以上たち、客寄せでなく実際の業務を行うケースも出てきた。ペッパーを扱うソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部本部長にペッパーの現状と今後の方向性を聞いた。

―法人向けの採用数とアプリケーションの数は。
 「2015年11月に受け付けを始めて以来、2000社以上に5000台が採用された。受け付けなどの『サービス』、販売業務サポートの『セールス』、販売促進の『PR』の三つが主な仕事。ペッパーの登場当時はいるだけで楽しさがあったが、いまはいるのが当たり前で見向きもされない。ちゃんと仕事をしないといけない」

 「アプリは今後半年にかけて出すものを含めて約50種。これまでの経験で、小売店、飲食店など業界ごとに特化したアプリを出してパッケージ的に利用してもらった方が良いと分かった。結局はどんな仕事をさせるかが導入の議論になる。すぐ仕事ができることを支援することが重要だ」

―ロボットの仕事を新たに作るのと、既存のサービスにロボットを組み込むのとどちらが多いですか。
 「小売りや飲食のチェーンは次の動きとして完全自動化を考えているところが多い。その構想にあるセルフレジとかのツールの一つにロボットがある、ということをよく聞く。ロボットは人と対話できて温かみがあり、電子看板などと違う。ロボットが持つ、顧客との結びつきを強める『エンゲージメント』の力を生かした利用方法が多く、それがロボットの仕事になる」

―シャープの「ロボホン」などライバルが出てきました。
 「全般的には競合が出るのは良いこと。市場が存在しないことが一番良くない。皆で市場を盛り上げたい。その上で、対話ロボットの間ではエンゲージメントの高さを競うことになる。他のロボットとペッパーで、どちらが足を止めてもらうか、友人になってもらうかを比べてもらい、足りなかったらペッパーを改善すれば良い」

 「ただ、我々はトータルで人がどういう体験をしてもらえるかを重要視する。ロボットの機器としての性能は極端な話どうでもいい。トータルのシステムでユーザーにどう心地よさや感動といった体験を与えるかが一番大事だ」

―ペッパー単体の進化もありますか。
 「エンゲージメントを高めるために必要な要素を研究開発し続ける。例えば、いまの握手に満足していない。より良い体験となる握手ができるようにしたい。ソフトの更新で可能ならすぐやるしハードの改善が必要なら提供する」

 「ハードの進化のテーマはいくつか議論している。法人向けに24時間動かし続けても壊れにくいというのも一つ。大きさが違うものも議論している。スマートフォンが使えない子供やシニア層との対話には小さい方が良いか、といった具合で検討している。スマホと一緒で3年の契約終了時に新たなペッパーを提案できれば面白い。研究開発向けに提供する『ナオ』は今の路線を続ける」

 法人向けのペッパーのレンタル料金は1台当たり最低でも月額5万5000円かかる。労働力として考えると決して安くない。ソフトバンクは20年にどの店にもロボットがいる世界を描いている。一層の普及には、役立つアプリ群の拡充と、対話能力の向上による“お得感”の演出が不可欠になるだろう。

シャープはコミュニケーションロボット「ロボホン」の開発促進を狙い、4月からアプリケーション開発企業向けに販売奨励金制度を始める。シャープが認定するアプリケーション開発パートナー企業が、新しくアプリ開発をしたい企業を見つけてロボホンを売る場合、紹介手数料として本体価格の一部をシャープが支払う。コミュニケーションロボットを巡ってはソフトバンクも2018年度に「ペッパー」のハード面を大幅刷新する考え。

シャープの販売奨励金制度は、法人向けアプリを開発する企業に対象を限定。個人ユースより先に普及が進む可能性がある法人用途のアプリ開発を加速する。

さらに中国語や英語への対応など多言語化を進め、用途の幅を広げる。

ソフトバンクは早ければ18年度に「ペッパー」のハード面を大幅刷新する考え。法人用途でペッパーを長時間使い続ける事例が増えたため、24時間稼働を可能にするタフモデルなどを検討する。また、ソフトウエアの改善でペッパーの音声認識性能を大幅に向上した。現行のペッパーのソフト改善は継続し、使い勝手を高める方針。

政府は東京五輪・パラリンピックが開催される20年を目標にロボット関連市場の大幅な拡大を目指している。シャープ、ソフトバンクなどをけん引役に、各社による販売のテコ入れが本格化しそうだ。