冬季五輪・平昌2018開会式

 第23回冬季五輪平昌大会が9日開幕した。

韓国での五輪は1988年ソウル夏季大会以来で、冬季大会は初開催。

史上最多の92カ国・地域から選手約2900人が参加する。

北朝鮮のミサイル発射などで軍事的緊張が高まる中、

開幕直前になって

国際オリンピック委員会(IOC)が

北朝鮮の参加を認める特例措置が取られた。

スポーツの祭典に政治的な思惑が色濃く影を落とす異例の大会となる。

(時事通信)


 開会式は屋外の平昌五輪スタジアムで行われ、

日本選手団は

冬の五輪で史上最多の出場8度を誇る

ノルディックスキー・ジャンプ男子の葛西紀明(土屋ホーム)が旗手を務めた。

日本選手団は海外開催の冬季五輪で最多となる269人(うち選手124人)。

開会式には高梨沙羅(クラレ)らジャンプ陣やカーリング男女の代表が行進した。


 韓国と北朝鮮の選手団は「コリア」として、入場行進の最後に同時行進。

個人資格で参加する「ロシアからの五輪選手(OAR)」も入場した。

IOCは組織的ドーピングが問題視されたロシア選手団の参加を禁じ、

厳しい基準を満たした選手に限って出場を認めた。


 開会式には韓国の文在寅大統領の他、

日本の安倍晋三首相、米国のペンス副大統領ら各国首脳も出席した。


 大会は25日までの17日間で、史上最多の102種目が行われる。

日本はスピードスケートやジャンプの女子、フィギュアスケート、

ノルディックスキー複合の男子に金メダルが期待され、

1998年長野大会で獲得した過去最多のメダル10個に迫るかが注目される。

 

 

 4年前のソチ五輪は主将を務め、今回は旗手。

五輪の大役が板についた葛西が胸を張り、堂々と選手団を先導した。

「日本選手みんなが最高のパフォーマンスを出せるように、エールを送りたい」。

大きく左右に振った日の丸に思いを込めた。


 開会式前日に行われた個人ノーマルヒル予選で出番を迎え、

冬季五輪史上初の8大会連続出場を達成。

歴史に名を刻み、「レジェンド」と呼ばれる45歳は日本選手団の顔にふさわしい。

「ソチ五輪が終わった時に、次は旗手だなと。

開会式の一番目立つところなので、僕にぴったりの大役」


 ちょうど26年前の1992年2月9日。

19歳でアルベールビル五輪(フランス)に臨み、五輪で初めてジャンプを飛んだ。

米国のデータ会社グレースノートが開会式前に出した数字によると、

平昌五輪の参加選手2912人のうち、47.8%に当たる1391人は

この五輪デビュー以降に生まれた選手。

気の遠くなるような長いキャリアを誇るベテランは、海外での認知度も抜群だ。

日本オリンピック委員会の平昌事務局には、

外国メディアからの取材申し込みや問い合わせが相次ぐ。


 晴れやかな笑顔には出場8度目の貫禄と、「五輪慣れ」した余裕がにじむ。

リップサービスを交え、「4年後は選手兼団長で行かせていただきたい」。

まだ何度でも、この舞台を経験するつもりでいる。

 

 

 開会式はマイナス20度を下回るような強烈な寒さは避けられた。

それでも、韓国気象庁によると気温は約マイナス3度。

強い風も吹いたが、立ち見が出るほど埋まった会場を途中で去る人は少なかった。


 民族衣装チマ・チョゴリに身を包んだ女性たちが舞踊を披露するなど、

随所に韓国文化も紹介された。

入場行進で多くのKポップが流れると、観客は体を温めるように踊った。


 五輪組織委員会が観客に配布した防寒キットもよく使われ、

大会ロゴが入った赤や黒のニット帽をかぶった人の姿も目立った。

手袋をしているせいか拍手の音は小さかったが、歓声は大きくこだました。

寒さに負けず盛り上がり、大量の花火が打ち上げられてフィナーレを迎えた。

 

 

 聖火台への最終点火者は

やはり、韓国が世界に誇るフィギュアスケートの元女王だった。

「国民の妹」と呼ばれ、国内でも絶大な人気を誇る金妍児さん(27)。

白いドレス姿でスケート靴を履いて登場し、

聖火台下の特設アイスリンクでスピンなどを披露。

五輪初の南北合同チームとなった

アイスホッケー女子「コリア」の韓国、北朝鮮の選手2人から

トーチを受け取って点火した。


 2010年バンクーバー五輪で韓国に初の金メダルをもたらし、

休養して平昌への冬季五輪招致に尽くした後、

またリンクへ戻って14年ソチ五輪で銀メダルを獲得した。

優雅なスケーティングとスピードに乗った正確無比なジャンプで魅了。

同じ1990年生まれの日本のスター、浅田真央さんとのライバル関係は

フィギュア史上に残る。


 大韓スケート連盟の安昭令副会長によると、「ヨナ効果」もあって

国内の登録選手の数はこの10年でほぼ倍増し、1000人に迫る勢いだという。

金妍児さんが韓国のフィギュア界、

さらには冬季スポーツ全体に残した足跡の大きさを考えれば、

まさにこれしかないという人選だった。

 

 

 各国の旗手には、スター選手や日本勢のライバルが顔をそろえた。

9番目に入場したドイツは、

ノルディックスキー複合で前回ソチ五輪金メダルのフレンツェル。

歓声の中で大きく旗を振り、

「とても名誉なこと。チームが自分を選んでくれてうれしい」と大役を喜んだ。


 フィンランドは

ジャンプ男子で史上最多8度の葛西紀明(土屋ホーム)に次ぐ、

7度目の出場となる40歳のアホネン。

オーストラリアは

スノーボード男子ハーフパイプで

平野歩夢(木下グループ)らとともに優勝候補のジェームズが担った。


 米国はリュージュ女子でソチ五輪銅のハムリン。

カナダはフィギュアスケートのアイスダンスに出場する2人が務め、

国旗を掲げるバーチューの肩をモイヤーが抱いて行進した。

 

 

 開会式のクライマックスの一つは、韓国と北朝鮮による合同入場行進。

バッハ会長もあいさつの中で、

「団結力の素晴らしい例が今夜の合同入場だ。彼らに感謝したい。

われわれは皆、このすてきな振る舞いに心を打たれた」と意義を強調した。


 2年前のリオデジャネイロ夏季五輪では難民選手団を結成し、

世界に平和を呼び掛けた。

アイスホッケー女子で南北合同チームを結成した今大会は

五輪の政治利用との批判も出ているが、

「平和への力強いメッセージになる」と自賛した。


 ロシアは組織的なドーピング問題で選手団を派遣できず、

認められた選手だけが個人資格で参加。

多くの観客を前に、バッハ会長は

「ルールを守り(不正に手を染めず)クリーンでいて

初めて五輪は本当に楽しめるし、真に価値ある記憶となる」とくぎを刺した。

 

 

 トンガの旗手を務めたノルディックスキー距離男子のタウファトフアは

寒さをものともせず、上半身裸で行進。

「トンガから太平洋を渡ってきたのだから、これぐらい大したことない」

と平然と振り返った。


 旗を力強く振って大歓声を浴びたタウファトフアは、

2016年リオデジャネイロ五輪の開会式でも同様の格好で観客を沸かせていた。


 英領バミューダの選手は、膝丈ほどのバミューダパンツで登場した。

 

 

 9日の平昌五輪開会式で、

聖火の最終点火は

フィギュアスケートの2010年バンクーバー五輪女王、金妍児さんが務めた。

式のクライマックスと言える場面。この演出には南北融和への願いが込められた。


 開会式会場に運ばれた聖火は

韓国のショートトラック五輪金メダリストから複数の元アスリートを経て、

五輪初の南北合同チームとなった今大会のアイスホッケー女子「コリア」で

主将を務める韓国の朴ジョンアと北朝鮮のエース、チョン・スヒョンの手に。

2人が一つのトーチを掲げて鮮やかに光る階段を上ると、

そこには金妍児さんが待っていた。


 金妍児さんが聖火台下の氷上でスケーティングを披露した後に

2人からトーチを受け取り、氷の塊に火をともすと、

そこから燃えさかるらせん状の物体が白磁の聖火台まで伸びて点火された。

 

(時事通信)