日本語解説 フル試合動画 | WBO世界スーパーウェルター級王座決定戦 ミゲール・コットvs亀海 喜寛


■4階級制覇王者ミゲール・コットvs.亀海喜寛戦が実現した背景
カリフォルニア州カーソン スタブハブセンター
WBO世界スーパーウェルター級王座決定戦

元4階級制覇王者
ミゲール・コット(プエルトリコ/ 36歳 / 40勝(33KO)5敗)
 VS.
亀海喜寛(帝拳/ 34歳 / 27勝(24KO)3敗2分)

「ミゲール・コットというボクサーは自分が20歳くらいの頃から見ていて、大ファンでした。そんなボクサーと戦えるのは凄く光栄ですが、最高の準備をして、負けることなど考えず、勝ちにいきます」

5月31日、ロサンゼルスで行われたキックオフ会見で亀海は堂々とそうコメントした。コットは日本でも人気の選手だけに、同じように感慨深い思いでこの日の会見を見守ったファンは多かったのではないか。

“プエルトリコ史上初の4階級制覇王者”。そんな肩書きを持ち出すまでもなく、コットは現代のボクシング界が誇るビッグネームである。フロイド・メイウェザー(アメリカ)、マニー・パッキャオ(フィリピン)、サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)を始め、拳を交えたスター選手は枚挙に暇がない。

引退後の殿堂入りも確実な世界的スターとの対戦は、どんな選手にとっても名誉である。もちろんメガケーブル局のHBOが生中継。日本人が絡むファイトとしては、歴史に残る舞台であることは間違いあるまい。

もっとも、“この一戦が世界的な意味でのビッグファイトか”と問われたら、必ずしも“イエス”とは答え難い。2015年11月にカネロに判定負けして以降、1年半以上もリングから遠ざかっていたコットにとっての復帰戦。タイトルはかかっていても、今後へのチューンアップの意味合いが強いファイトなのだろう。

3月18日にゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)vs.ダニー・ジェイコブス(アメリカ)戦がニューヨークで行われた際、この試合の開催はほぼ決定とすでに複数の関係者が語っていた。それにもかかわらず正式発表が延びたのは、HBOがコット対亀海の単発での中継に難色を示したからだと言われる。

その後、コットのプロモート権が、業界内で評判の芳しくないロックネイション・スポーツからゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)に引き継がれることが決定。亀海戦後にメジャーファイトを行うことをGBPとコットが仮約束することによって、HBOからついにゴーサインが出たというのが真相のようである。

31日の会見の直前、GBPはコットと複数戦契約を結んだというリリースをメディア宛てに発送した。コットは亀海戦後の12月2日に次戦を予定しているとの報道もなされている。こんな動きからは、36歳を迎えたプエルトリコの英雄の最後のビッグファイトシリーズ計画が見えてくる。

過去9戦5勝3敗1分の亀海が相手のカムバック戦でさびつきを落とし、その後の12月に同じくGBP傘下のデビッド・レミュー(カナダ)、あるいはファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)、ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)といった著名ファイターと対戦する。ここでも勝てば、晴れて来年5月のシンコ・デ・マヨ(メキシコの祝日)にカネロと再戦もあるだろう。

■サムライファイターが掴んだチャンス
ただ、断っておきたいが、コット相手では完全な“Bサイド”扱いだからといって、亀海が抜擢されたことに価値がないと言いたいわけではもちろんない。
スキルと経験には差があるだけに、コット絶対有利は否めない。それでも最終的にHBOが起用を承諾したのは、亀海がアメリカの舞台で多くの好試合を演じてきたことが評価されたからに違いない。
「亀海に関して1つだけ言えるのは、リング上ですべてを出し尽くしてくれる選手だということ。コンディションや意欲の面でまったく不安はない。ブランク明けのコットに対し、良い試合をしてくれると期待しているよ」
あるHBOの重役に尋ねると、34歳の日本人選手に関してそんな好意的な言葉が返ってきた。そして、対戦することが名誉というだけでなく、試合内容次第で、亀海にはさらに先を目指すチャンスが生まれてくるのだろう。

人気者コットがHBOのレギュラー放送に登場とあって、この試合は100万件前後の視聴者を集めるはずだ。それほど多くのファンの前で優れたパフォーマンスを見せれば、インパクトは大きい。亀海にとってコット戦が最終ゴールではなく、この試合後、スーパーウェルター級、ミドル級の強豪たちから再びビッグマネーファイトの声がかかる可能性も十分にある。
「トラッシュトークとか好きじゃないし、そんな英語力もないんで、とにかく皆さんが喜ぶ試合をしますんで、ぜひHBOで見てください」
会見でそう述べた亀海は、LA のリングで、目の肥えたHBOの視聴者たちを再び喜ばせることができるか。
勝てば日本のボクシング史に残る伝説となる。例え力及ばずとも、好ファイトならば賞賛され、亀海本人、日本ボクシング界全体の未来に繋がる。“ローリスク、ハイリターン”の楽しみな舞台で、サムライファイターが思う存分に力を発揮することを願いたいところだ。


アメリカのプロモーターは亀海のファイトに感激し、またやってくれ!と言ってきたらしい。