ミドル級メガファイト | WBO世界S・ウェルター級タイトルマッチ | ゲンナジー・ゴロフキンvsカネロ・アルバレス


超えろ 世紀の一戦
アルバレスとゴロフキンのデータを比較。

=世界ミドル級タイトル戦=
世界ボクシング協会(WBA)
世界ボクシング評議会(WBC)
国際ボクシング連盟(IBF)3団体統一王者

ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン) 37戦全勝(33KO)
VS
挑戦者
サウル・アルバレス(メキシコ) 49勝(34KO)1敗1分け

【日時】
2017年9月16日(日本時間17日)開催予定

【場所】
米ネバダ州ラスベガス


プロボクシングのミドル級3団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)は、スーパーウエルター、ミドルの世界2階級を制したサウル・アルバレス(メキシコ)を挑戦者に迎え、9月16日に米ラスベガスで王座防衛戦を行う。試合の興行を手がけるゴールデンボーイ・プロモーションズ(米ロサンゼルス)が6月5日に発表した。2人の勝負はアルバレスがミドル級に進出した2015年あたりから機運が高まったが、ウエートやファイトマネーの条件が合わず合意には至らなかった。約2年を経て日の目を見る一戦は、近年ではメイウェザー-パッキャオ戦(15年5月)に次ぐ規模のファイトとなる。

ゴロフキンは、04年アテネ五輪ボクシングのミドル級で銀メダルを獲得。06年にプロ転向した。10年に無敗のままWBAのミドル級王者となり、17年3月のダニエル・ジェイコブス(米国)に判定勝ちするまで17連続KO防衛に成功した。現代ボクシング界で最強の1人と目される選手で、ニックネームは「戦いの神」。本名が、ゲンナジー・ゲンナジービッチ・ゴロフキンのため、「GGG(トリプルジー)」とも呼ばれる。

対するアルバレスは、メキシコの人気ボクサー。赤毛のため「エル・カネロ」(スペイン語でシナモン)と呼ばれる。05年に15歳の若さでプロデビュー。20歳のとき、スーパーウエルター級の世界タイトルを獲得した。15年11月には、ミゲル・コット(プエルトリコ)に大差判定勝利を収めてミドル級王者となり、2階級で世界のベルトを巻いた。戦績は49勝(34KO)1敗。黒星は13年9月のフロイド・メイウェザー(米国)戦の判定負けだけだ。
メイウェザーとパッキャオの世紀の一戦は交渉が難航、実現まで6年ほどかかり、「ピークを過ぎた者同士の戦い」と言う人もいた。しかし、アルバレスとゴロフキンはまさに今が旬。互いに高いKO率を誇り、誰に聞いても「倒すか倒されるかの試合になる」という答えが返ってくる。興行面は難しいかもしれないが、内容では世紀の一戦を上回るのではないか。両雄への期待はゴングが近づくにつれ、高まるばかりだ。


カネロ、体格差はね返せるか
「(アルバレスは)そんなに親しみやすい選手ではありません」。カメラマン・福田直樹氏の写真展(2016年7月、東京都渋谷区)で同氏からそう聞いたことがある。同氏は、アルバレスとゴロフキンの両選手を撮影した経験を持つ。
確かにインタビューの映像を見ても、アルバレスは無愛想だ。笑顔も少ないし、自分が話すスペイン語を通訳に英訳してもらっている。しかし、今年5月に行われたフリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ)を判定で下した後、アルバレスはゴロフキンをリングに招き入れ、9月に自分たちが対戦することをその場で発表した。アルバレスも大きな試合を積み重ねるうちにショービジネスに慣れてきて、演出に対応するだけの柔軟性は身に着けたようだ。

ボクシング自体も幅が出てきて、16年はアミル・カーン、リアム・スミス(いずれも英国)をKO。チャベス・ジュニア戦も持っているパンチをすべて打ち込んで、一方的に痛めつけた。メイウェザー、コット戦のときのように、スピードあるステップに翻弄(ほんろう)されて苦し紛れのパンチを出す場面は見られなくなった。しかし、今回の相手ゴロフキンは生粋のミドル級の選手。これまでの相手と比べて体が大きく、得意の力勝負を仕掛けると苦戦しそうだ。しかも7年も頂点に君臨し、17連続KO防衛も成し遂げている実力者だ。

「アルバレスとゴロフキンが戦ったらどうなる?」という質問に対して、福田氏は「どちらかが必ず強打を入れる。いい試合になると思います」とした上で、「ゴロフキンが勝つんじゃないですか。体格が違うんで。元々の骨格が違う気がします」と間を置かずに答えた。両雄の肉体を間近で撮影した方だけあって、その言葉には説得力を感じた。
スーパーウエルター級出身のアルバレスにとって、1階級上のミドル級王者ゴロフキンと打ち合うのは確かに厳しい。今度は体格で劣るアルバレスが、メイウェザーやコットのように作戦を練り、スピードとテクニックを主体に立ち回る番なのかもしれない。一方で、時にはカーンやスミスらを下してきたパワーパンチ、力と力の勝負も見せてほしいものだ。

ゴロフキンにKO勝ち、もしくは明確な判定勝ちを収めた暁には、メイウェザーやマニー・パッキャオ(フィリピン)に肩を並べるのではないか。区切りの50勝目を挙げた27歳(試合当日)の若者には、多くの挑戦者が現れ、これまでの倍、あるいは一桁違うファイトマネーが提示されるだろう。ミドル級最強のゴロフキンとの勝負は、アルバレスにとってボクサーとしてはもちろん人生の分かれ目になるはずだ。


ゴロフキン、気は優しくて力持ち
「(ゴロフキンが)パンチを全力で決めている、力が入っている感じがいい」。スーパーフライ級の元世界王者飯田覚士氏は、福田氏の写真展でそう話した。飯田氏おすすめの1枚は、ゴロフキンが世界戦で左アッパーカットを挑戦者に打ち込んでいるカットだった。撮影した福田氏も「ゴロフキンは打つときは、ものすごくいい表情をする。撮りがいのある選手」と評す。ミドル級最強と言われるゴロフキンは大舞台でもチャンスを逃さず、決めパンチでしっかりとナックルを固められる選手。見せ場を作れる選手だ。

 防衛戦で17戦連続KO勝ちを果たした猛者。判定勝ちとなった17年3月のジェイコブス戦も、4ラウンドにはしっかりとダウンを奪っている。「倒して勝つ」分かりやすいスタイルが、多くのファンを引き付けている。また、この選手は場所を選ばないことでも有名だ。米国のほか、ドイツ、パナマ、モナコなど多くの国々で試合を行い、KO勝ちを積み重ねてきた。ホームもアウェーも関係ない。どこでやろうと彼は勝つ。

「普段は温厚な人物。それでいて試合になれば強い。二面性があって、魅力的な選手です」。福田氏は、ゴロフキンの内面をそう評した。ひとたびリングに上がれば誰よりも強く、人間性も優れている。挑発的な言葉を並べるアスリートが多い昨今、珍しいタイプかもしれない。

 ズバリ、勝敗は、ゴロフキン有利とされている。ボクシングもそうだが、壮年期の35歳は心理的にも優位に立つのかもしれない。今回の試合のリリースには両雄のコメントが掲載されている。「俺は誰も恐れない。俺の時代だ」と血気盛んなアルバレスに対して、ゴロフキンは「ファンにエキサイティングな試合をお見せする」と落ち着いたもの。福田氏のゴロフキン評、本人のコメントからもミドル級王者が混乱する姿は想像しがたい。倒し倒されという試合展開になろうとも、ゴロフキンの心はクールなままではないだろうか。冷静に相手の癖や弱点を見極めて、流れをつかむ。KOでも、判定でも勝利する。過去の映像とアッパーカットの写真、取材メモを眺めているとそんな結末が頭に浮かぶ。



■好ファイト、KO決着
同じミドル級の村田諒太(帝拳)とアッサン・エンダム(フランス)のWBA王者決定戦が5月20日、東京・有明コロシアムで行われた。1-2で村田が敗れた判定結果は物議をかもし、WBAはすぐさま再戦を指示。エンダムを支持したジャッジ2人には6カ月の資格停止処分が下された。WBAは事実上、「誤審」を認めたことになる。

試合会場で村田-エンダム戦を観戦したが、個人的にはどちらの手が上がってもおかしくないと思った。村田はダウンを奪ったし、エンダムは相手のガードを縫うようにコンビネーションを打ち込んだ。ジャッジは手数の多かったエンダムを支持したが、村田がもう一度ダウンを奪っていたら結果は逆だったはず。それほど接戦だと筆者には感じられた。この日行われた7試合はいずれも素晴らしい内容だっただけに、メインイベントにみそがついたのは非常に残念だ。

同じ階級のアルバレスとゴロフキンには、すべてを払拭するようなファイトを願うばかりだ。できるならKO決着。村田-エンダム戦もそうだが、2年前にラスベガスで観戦したメイウェザー-パッキャオ戦も議論を呼ぶ判定決着だった。今回の試合まで物言いがついてしまうと、ボクシングという競技の本質がますます問われることになる。

「うそつき! 泥棒!」。村田-エンダム戦直後に、観客の1人が叫んでいた言葉だ。ジャッジやレフェリーに対して「うそつき」、勝者エンダムに対して「泥棒」と言いたいそうだ。
「ブルシット(くそやろう)! メイウェザー」。メイウェザー-パッキャオ戦で米国人男性が叫んでいた。ジャブとステップで猛攻をさばいたメイウェザーへの罵声があちらこちらから聞こえてきた。
アルバレスとゴロフキン戦の後には、どんな言葉が飛び交うのか。億単位のファイトマネーに見合う好ファイトはもちろんだが、ジャッジに頼らないKO決着を期待してやまない。