井上尚弥vs.那須川天心


ラスベガス進出か。井上尚弥vs.那須川天心か。ボクシングの未来はどっちだ。
かつて「天才」と称されたカウンターパンチで世界ミニマム級王者となった男がいる。大橋秀行。第19回「Number Sports Business College(NSBC)」の講師である。
日本プロボクシング協会の会長を務め、男女合わせて世界王者を4人輩出している大橋ジムの会長でもある元チャンピオンと、じつはボクサーだったという池田純氏が、岐路に立っている業界の将来像を語り合った。
池田 じつは私もボクシングをやっていたんですよ。DeNAの執行役員の時、最初はキックボクシングをやっていたんですけど、足を蹴られると仕事できないと思ってボクシングを始めたら、のめり込んでしまって。
もともとは『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ボクシング予備校」という企画を見て、ボクシングに興味を持ったんです。その少し前に(マイク・)タイソンが東京ドームで試合をして、みんながテレビにかぶりついて見ていて。あのあたりからでしたね。
練習生が一番増えたのは『ガチンコ!』の時。
大橋 あの頃が黄金時代だったと思います。練習生の中でプロライセンスを持っている人は1990年が約1500人だったんですが、それから毎年増えて2004年がピークで3600人くらい。そこから落ちて、今は2300人くらいですかね。
僕がジムを開いたのが1994年なんですけど、その時に入ってきた練習生の9割がプロ志望でしたが、今は逆で9割が健康のためとか、痩せたいからとかそういう理由です。プロを目指す人は10%を切っているんじゃないですか。
ちなみに一番、練習生が増えたのは『ガチンコ!』という番組の「ガチンコ・ファイトクラブ」という企画があった頃でした。不良っぽい人がたくさん来ました。次から次に来て、あまり続かなかったんですが(笑)。
大橋会長「ボクシングだけで食べていくのは至難の業」
池田 野球の世界で言えば、プロの選手というのは野球だけで食べていく人ですが、ボクシングはどうですか。
大橋 ボクシングだけで食べていくのは至難の業です。実現できているのはプロボクサー全体の3%くらいじゃないですか。なにしろ今、日本のボクシング界で興行を黒字にできる人はほとんどいません。後楽園ホールを満員にしても無理ですね。超満員でも赤字になる計算ですから。
池田 どうすれば、ボクシングだけで食べていけるようになるんでしょう。例えば、世界王者になるとファイトマネーはどれくらいもらえるんですか。
大橋 ピンキリなんですが、一番安い人は300万円ほどで、うちの井上尚弥クラスになると、4000万円以上いきます。井上の場合、これから海外で戦うようになれば、それ以上になると思います。
池田 やはり井上選手のようになることが、ボクサーにとって理想なんですか。
大橋 そうですね。今の子供が憧れているのも、井上尚弥だと思いますよ。
井上尚弥という例外的な存在と、ロールモデル。
池田 野球はお金がグラウンドに埋まっていると言われますし、プロになると年俸1500万円もらえて、一軍に定着すると3000万、活躍すると5000万、1億になっていく。そういう道筋がはっきり見えている。確かにボクシング界における井上選手はすごいんですけど、ロールモデルはどこなんだろうな……。今、国内のボクシング人気を高めるためには海外で試合をやることが一番ですか。
大橋 井上のような選手は、日本ボクシング始まって以来初めてだと思うんです。強くなりすぎて、相手がいなくて大変なこともありますが、海外からいい条件で「こっちに来て試合をやってくれ」というオファーがあります。
僕らの時代は、世界王者はボクシングしかいなかったし、野茂(英雄)もメジャーに行っていなかったし、海外で活躍するプロサッカー選手もいなかった。今はボクシングのレベルとしては昔に比べて絶対に高いんですけど、他のスポーツ選手が外国で活躍しているんで、ボクシングもそういう方向に行かなくてはいけない。だから、井上がラスベガスでやったり、村田(諒太)選手が統一戦やったり、究極的にはヘビー級王者を出すということじゃないかなと思うんですが。
かつてマニー・パッキャオというフィリピンの選手がいて、彼もアメリカで強敵に挑戦して、バッタバッタと強いのを倒していった。ああいうことを尚弥でやりたいし、それをやらせるのが僕の使命だと思っています。
池田「昔、『修羅の門』という漫画で……』
池田 今、インターネット上では井上対(キックボクシングの)那須川天心が見たいと言われています。
大橋 那須川選手は強いですね。ボクシングをやっても世界王者になれますね。これまで3戦目での世界王者というのが最速記録なんですが、それを破れるとしたら那須川選手がボクシングをやった時じゃないですかね。本人もやりたいんじゃないですか。
池田 ぜひ、見たいですね。昔、『修羅の門』という漫画に陸奥九十九という主人公がいて、あらゆる格闘技をマスターしながら勝っていく。今、それが井上選手や那須川選手なんじゃないかな、と。また、女性的な温かい目でも、格闘技を観れるというところの最高峰が村田諒太選手で、この3人がこれからの格闘技を引っ張って行ってくれるんじゃないですか。