ジャンプが200万部の大台割れ


ジャンプ最強伝説…直近四半期の実情

専用の電子書籍・雑誌リーダーだけでなくパソコンやスマートフォン、タブレット型端末を用いたインターネット経由で漫画や文章を読む機会が多数設けられるようになったことで、人々の読書欲はむしろ上昇の一途にあるとの解釈もある。一方で紙媒体を用いた本は相対的な立ち位置の揺らぎを覚え、多分野でビジネスモデルの再定義・再構築を迫られる事態に陥っている。今回はその雑誌のうち、特にすき間時間の良き友である少年向けコミック誌について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)から、実情をさぐる。

まずは少年向けコミック誌の直近四半期、2017年1月から3月の実情。「週刊少年ジャンプ」が群を抜いている状況は想像の通り。少し前までは唯一のダブルミリオンセラー(200万部以上の実績)誌として君臨中……だったのだが、印刷証明付き部数として公式データベース上で開示されている限り(2008年第2四半期以降)でははじめて、その大台を割り込む形となった。次いでやや年上の少年向け雑誌「週刊少年マガジン」、さらには小学生までの低年齢層向け(主に男子向け)雑誌「コロコロコミック」。

少し前までは「コロコロコミック」「週刊少年マガジン」も合わせ3誌が100万部超えだったものの、「妖怪ウォッチ」によるけん引効果が切れ、「コロコロコミック」が脱落。そして2016年第3四半期で「週刊少年マガジン」も100万部を割り込んでしまっている。今四半期では「週刊少年マガジン」の100万部回復は成らず、むしろさらに部数を減らしている。

かつては複数誌が100万部を超えていたが、「週刊少年マガジン」がミリオンクラブから脱退したことで、少年向けコミック誌で100万部超えの雑誌は「週刊少年ジャンプ」だけとなってしまった。恐らくはこの状態が今後も継続するのだろう。やはりすき間時間の消費対象の代替的存在、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末の普及による影響は極めて大きい。

他方、唯一のミリオンクラブ会員でトップを行く「週刊少年ジャンプ」だが、直近データで確認すると印刷証明付き部数は現在191万5000部。雑誌では返本や在庫本(売れ残り)なども存在するので(返本率などは部数動向では非公開)、それを勘案すると最終消費者の手に渡っている冊数は、これよりも少なくなる。雑誌の種類やジャンルによって返本率は大きな変動があるが、暫定値として1割から2割と試算すると(上場している取次会社の決算資料の限りでは、その値が大よそ平均値)、実セールスは180万部ぐらいだろうか。単なる通過点、そして実売ではすでに領域に届いていたことは確実であったとはいえ、印刷証明付き部数の時点で200万部割れとの事実は、衝撃的に違いない。

同誌はピーク時となる1995年では635万部の値を出していた記録を目にするに、その4割足らずにまで落ちてしまった現状は、時代の流れを感じさせる。半年前における「週刊少年マガジン」の100万部割れと合わせ、雑誌全体の歴史において一つの時代を刻んだ流れと考えれば、冷静に受け止めることもできるのだが。

コンビニなどでも良く見かけるメジャーな週刊コミック誌で、大規模かつ大胆な組織構造改革宣言を行った「週刊少年サンデー」の部数は、今四半期では31万9667部。容易に取得可能な最古のデータとなる2008年の4月から6月期における86万6667部からは37%程度にまで部数を減らしている。

グラフの形状からも分かる通り、何度か大胆な改革により部数持ち直しの機運も見られたが、全体的な流れに逆らうまでには至っていない。今回の改革に関しても、現時点ではその成果は数字には現れていない。もっとも2015年8月に宣言を始めたのだから、今回の該当期間で成果を見せろとは難しい話であり、むしろ今後の動向に期待をしたいところ。手をかける部分が大規模かつ深刻なものであれば、その状況改善と成果が数字となって表れるのには、半年や一年の短期間では無く、数年もの時が必要とされよう。

ただしそこまで同誌そのものが現状の体制を維持できるのか、早ければ2017年中にも陥る可能性がある30万部割れが一つの節目となるのではないか。その点が不安ではある。

1誌のみがプラス…前四半期比動向

続いて公開データを基に各誌の前・今四半期間の販売数変移を独自に算出し、状況の精査を行う。雑誌は季節でセールスの影響を受けやすいため、四半期の差異による精査は、雑誌そのものの勢いとはズレが生じる可能性がある。一方でシンプルに直近の変化を見るのには、この単純四半期推移を見るのが一番。

なおデータが雑誌社側の事情や休刊などで非開示になった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌は、このグラフには登場しない。

今四半期で前四半期比によるプラス計上の雑誌は「少年サンデーS」の1誌のみ。プラス16.2%と大きな上昇幅。

元々販売部数が少数(直近では1.4万部)で前期比のぶれが生じやすいのも一因だが、今回の健闘ぶりはそれよりもむしろ、言葉通り中身が買われたとの解釈が妥当だろう。特化性のある雑誌構成に加え、2017年3月25日発売号では高橋留美子先生の特集が掲載されており(「高橋留美子2億冊突破。付録全員サービスなど るーみっくファンなら買うべきこの1冊」とのコピーが表紙を踊っている)、これが部数を大きくけん引したものと思われる。

同誌は以前リニューアルに際して多様な本家週刊少年サンデーの外伝版的作品の導入やテレビアニメの漫画版、人気作品のリバイバル連載などで大きく部数を伸ばし(2012年)、昨年も青山剛昌先生の描き下ろし複製原画やシールなどの付録(応募券など)で突発的な部数増加を見せるなど、気概のある企画を打ち出すことで知られている。

今後の挙動にも大きな期待が寄せられよう。

他方、誤差範囲内とも判断できる5%内の下げに留まった雑誌は7誌、それ以上の下げ幅を見せたのは5誌。特にコロコロ系の下げ幅が著しいが、これは「妖怪ウォッチ特需」からの失速の中にあると解釈するのが無難。

季節動向を考慮し前年同期比で検証

続いて季節変動を考慮しなくて済む、前年同期比を算出してグラフ化する。今回は2017年1~3月分に関する検証であることから、その1年前にあたる2016年1~3月分の数字との比較となる。年ベースと少々間が開いた期間の比較となるが、雑誌の印刷実績で季節変動を除外し、より厳密に知ることができる。

数十年もの歴史を誇る雑誌もある中で、わずか1年で数十パーセントもの下げ幅を示す雑誌も見受けられるが、それだけ雑誌業界は大きく動いていることを再確認させられる……とはかつて用いていた表現だが、最近では「見受けられる」ではなく「少なくない」と差し換えた方が良い状況となっている。

「少年サンデーS(スーパー)」が高橋留美子先生の特集などで大きく部数を底上げしたのは上記の通りだが、前年同期比でも大きな伸びを示す形となった。それ以外の雑誌はすべてマイナス、しかも誤差領域内にあるのは1誌のみ。

水曜発売の週刊誌として相並び紹介されることが多い、そして昨今では100万部割れで注目を集めた「週刊少年マガジン」と、その宿命的ライバルな存在の「週刊少年サンデー」の部数動向は次の通り。

「週刊少年マガジン」の方が部数は約3倍多いが、部数の下げ方もやや急で、その差は少しずつだが縮まりつつある。このような形での競争ではなく、双方とも上昇機運の中での競り合いを見せてほしいものだが。

現在は電子書籍、ウェブ漫画が浸透する中で、小規模書店の閉店、コンビニでのコミック誌のシュリンク化・棚からの撤去が続き、紙媒体を手に取る機会が減少している。漫画を提供し、市場を支えていくための仕組みも選択肢が増え、領域が広がり、これまでとは異なる発想が求められつつある。これまでは馬車でしか行き来できなかった場所への輸送ビジネスが、バスや電車、飛行機などが登場し、馬車業界において顧客が奪われているような展開とも表現できる。

なお今件の各値はあくまでも印刷証明付き部数であり、紙媒体としての展開動向。コミック誌の内容が電子化されて対価が支払われた上でダウンロード販売された場合、その値は反映されない。そして電子雑誌の利用性向も確実に上昇している。そのため、印刷証明部数が減少を続けても、各雑誌、コミックそのものの需要がそれと連動する形で減退しているとは限らないことは認識しておくべきである。

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