人気連載続々終了した『週刊少年ジャンプ』が抱えた苦境


大手出版社の屋台骨を支えていると言われるコミックだが、デジタル化を含めて激変の波に襲われている。その全体像は発売中の月刊『創』5・6月号に総特集が掲載されているのでご覧いただきたいが、ここで名実ともにマンガ界のトップを走る『週刊少年ジャンプ』が直面した危機と、それを集英社がどう乗り切ろうとしているか報告しよう。
同誌が直面した危機とは、この1~2年、人気連載が次々と終了していったことだ。人気連載終了はもちろん本誌の部数にも影響し、『週刊少年ジャンプ』の部数は1年前の250万部から200万部に落ち込んだと言われる。しかし、それ以上に深刻なのは、連載終了した作品をまとめた単行本、いわゆるコミックスの新刊が出なくなることだ。初版360万部を誇る『ONE PIECE』のコミックスが年に何巻出るかで集英社の決算の数字が変わるというほど、大型作品の経営寄与率は高いのだが、『ONE PIECE』は安泰だといえ、それに続く初版数十万部の作品の連載が、この間、次々と終了した。
この1年間だけでも『暗殺教室』『BLEACH』『こちら葛飾区亀有前公園派出所』『トリコ』の4本、その前年には『NARUTO―ナルト―』『黒子のバスケ』が終了している。
つまり集英社の屋台骨を支えてきた人気作品のかなりのものがこの2年間でごっそりなくなってしまったのだ。集英社の次の決算が大きな打撃を受けていることは間違いないといえる。
ジャンプブランドを始め集英社のマンガ部門全体を統括している鈴木晴彦常務が『創』のマンガ特集の取材に対してこう語っていた。
「正直、かなりこたえました」
実は『週刊少年ジャンプ』は1995年に600万部超という驚異的な部数を誇っていたのだが、『ドラゴンボール』や『スラムダンク』『幽遊白書』という人気連載が次々と終了したのを機に部数が一気に落ち込んだ。それ以来、一貫して部数減が続いているのだが、この1~2年の人気連載終了は、その20余年前の悪夢を思い起こさせたというわけだ。
「ただ、もっとずるずると落ち続けるのではないかという不安もあったのですが、実際はそうでもなかった。あれだけ人気の連載が終了した割にはよく持ちこたえたと思います。よくふんばったなというのが率直な感想です」(鈴木常務)
一時期、集英社のマンガ部門関係者の顔は一様に暗かったといわれるが、この春、少し明るさが出てきたのは、危機を打開するための施策が少しずつ動き出し、明るい見通しが出てきたからだ。
「今年は『週刊少年ジャンプ』も新しい作品を育てないといけないし、正念場の年になると思います。『ジャンプスクエア』や、春に刊行予定の増刊『ジャンプGIGA』、それにマンガ誌アプリの『少年ジャンプ+』などを、どう連動させてコンテンツを作っていくか。新陳代謝が進むと思います」(同)

アニメ化などで期待の作品も次々と…
不動の地位を誇る『ONE PIECE』に続く作品といえば、不定期掲載の『HUNTER×HUNTER』を除けば、現在2位につけているのが『ハイキュー!!』だ。そしてこの1年、急速に人気を伸ばしたのが『僕のヒーローアカデミア』だ。2016年春から始まったアニメ化で弾みがつき、2017年も4月からアニメの第2シリーズが放送されている。
「『僕のヒーローアカデミア』のアニメは半年間放送予定で、おそらくコミックスが初版100万部を突破するでしょう。先ごろ発表された読売新聞社などが主催のSUGOI JAPAN AWARD 2017でも『僕のヒーローアカデミア』が、マンガ部門の1位に選ばれました」(同)
同じく4月からアニメが放送された作品としては『BORUTO―ボルト―NARUTO NEXT GENERATIONS』が挙げられる。『NARUTO』の主人公の子どもを描いた作品で、『週刊少年ジャンプ』に月1のペースで連載されている。
そのほか今人気上昇中なのが『ブラッククローバー』『約束のネバーランド』と『鬼滅の刃』。鈴木常務は、2017年中にその3作品を50万部タイトルにしたいという。
それ以外に期待がもたれているのは、『黒子のバスケ』を描いていた藤巻忠俊氏の新連載『ROBOT×LASERBEAM』だ。少年誌には異例のゴルフマンガだが、作品の評価が高く、連載第1回は『週刊少年ジャンプ』の表紙を飾っている(冒頭の写真)。
「今年に入って次々と新連載を立ち上げ、“春の6連弾”と呼んでいるのですが、その6本目がこの作品です。3月に『黒子のバスケ』が映画化されることなどいろいろなタイミングも考えました。
考えてみれば、『週刊少年ジャンプ』はアンケート主義による競争原理を取り入れたり新人発掘のためにいろいろな試みをしてきたのですが、このところ『ハイキュー!!』にしろ『僕のヒーローアカデミア』にしろ、その作家にとって2本目3本目の作品で大ヒットするケースが目立つ。藤巻さんもデビュー作の『黒子のバスケ』が大ヒットしたわけですが、今回の2作目も期待できる。1作目を終えた作家が次をめざしてコンペを行い、2作目3作目でさらにヒットを出すという成長スタイルはこれから増えていくような気がします」(同)

『ジャンプGIGA』や「ジャンプ+」の連載も
『週刊少年ジャンプ』の今後を支える作品をどう作っていくかという課題をめぐっても今後いろいろな施策を考えているという。そのひとつが春に4カ月続けて発行される増刊『ジャンプGIGA』だ。
「4回の連載で手応えを見ようということで4回分を仕込んでもらっています。昔は『少年ジャンプ』の連載会議で掲載作品を全て決めるという1回勝負だったのですが、今は新人の発表の場として増刊を生かしていこうということです。
また『ジャンプスクエア』からも『プラチナエンド』『憂国のモリアーティ』など好調タイトルが出ています。デジタルの『ジャンプ+』からも、コミックスにして10万部を超える作品が次々と出始めています。
それら4つの媒体から新しいコンテンツをどうやって生み出していくか、というのを今後は意識的に取り組んでいこうと思っています」(同)
特にこの間注目されるのは、『ジャンプ+』のデジタル発の作品から次々とヒットが出ていることだ。
「例えば『青のフラッグ』という作品はネットでは大きな評判になっています。もともと『週刊少年ジャンプ』で連載を描いていた作家によるもので、かつて担当していた編集者が今『ジャンプ+』にいるのでそこで連載が始まったのですね。
それから『終末のハーレム』もデジタルファーストの作品ですが、第2巻のコミックスが23万部くらい行っています。そのほかも『カラダ探し』などコミックスで10万部を超える作品がこのところ何本も出ています。
いま『週刊少年ジャンプ』で連載中の『約束のネバーランド』も原作の白井カイウさんと作画の出水ぽすかさんのお二人は最初『ジャンプ+』でコンビを組み、本誌で連載することになったわけです」
これまで集英社でデジタルファーストのヒットといえば青年誌系の「となりのヤングジャンプ」で連載された『ワンパンマン』が知られていたが、少年誌系の『ジャンプ+』からも続々とヒットが出始めているというわけだ。
集英社では、2017年は『ONE PIECE』20周年、『ジョジョ』30周年であるほか、来年が『週刊少年ジャンプ』50周年に当たるため、7月から「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展」など、周年企画が始まるという。
「いろいろな意味で今年は勝負の年になるでしょうね」と語るのは、取締役の隅野叙雄コミック販売部長だ。
「コミックスにしても既刊の重版比率が減少しています。アニメ化なども放送すれば必ずヒットするわけではありません。最近は書店さんからもどの作品を売ったらよいかわからないという声も聞きます。
そこでこの2月に主要書店法人のマンガ担当のバイヤーの方々に集まっていただいて、動画等も使って今後のいち押し作品についての説明を行いました。従来は人気作品を中心に売っていけばよかったのですが、これからは作品を皆が育てていくことも必要です。営業スタイルも大きく変わらないといけないと思っています」
人気連載が1~2年で次々と終了という危機に直面しながら、次の作品を育てるための手を次々と打っている『週刊少年ジャンプ』、これから1年が正念場と言われるが、果たしてその行方はどうなるのだろうか。
ちなみに2017年はライバルの講談社の『少年マガジン』でも、『別冊少年マガジン』連載の『進撃の巨人』がアニメ第2期の放送や舞台化などで大きな期待を持たれているが、それに続く新作の大ヒットをどうやって生み出すかが大きな課題になっている。
また小学館の『週刊少年サンデー』も、一昨年、編集長交代に伴って連載の6割を入れ替えるという大手術を行い、ようやくその後の新連載からヒットの芽が見え始めているとはいえ、『名探偵コナン』に続く作品が出ていない現状は深刻だ。
少年マンガ誌3誌とも、2017年は正念場の年といえよう。ここでは『週刊少年ジャンプ』の課題と現状について紹介したが、『マガジン』『サンデー』を含む3誌の現状や、最近健闘している講談社の『少年シリウス』の状況について、

◆「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」少年コミックの変容
「この取材を受けるのが1カ月前だったらもっと暗い顔をしていたかもしれない」
 冗談めかしてそう語ったのは集英社の鈴木晴彦常務だ。ジャンプブランドを始め集英社のマンガ部門全体を統括している。
 この1~2年、『週刊少年ジャンプ』の人気連載が次々と最終回を迎えた。この1年間だけでも『暗殺教室』『BLEACH』『こちら葛飾区亀有前公園派出所』『トリコ』の4本、その前年には『NARUTO―ナルト―』『黒子のバスケ』が終了していた。
 関係者の頭をよぎったのは1995年に『DRAGON BALL』などの人気連載が終了したのを機に同誌の部数が一気に急落した過去の苦い思い出だった。今回実際、同誌の部数は1年前の250万部から200万部台まで落ちたのだった。しかも雑誌の部数だけでなく、連載をまとめた単行本(コミックス)も人気作品の新刊が出なくなるわけだから、打撃は二重に襲ってくる。
「正直、かなりこたえました。ただ、もっとずるずると落ち続けるのではないかという不安もあったのですが、実際はそうでもなかった。あれだけ人気の連載が終了した割にはよく持ちこたえたと思います。よくふんばったなというのが率直な感想です」(鈴木常務)
 この1カ月、関係者の間に少し明るさが出てきたのは、次の展開へ向けての施策が少しずつ動き出し、明るい見通しが出てきたからだ。
「今年は『週刊少年ジャンプ』も新しい作品を育てないといけないし、正念場の年になると思います。『ジャンプスクエア』や、春に刊行予定の増刊『ジャンプGIGA』、それにマンガ誌アプリの『少年ジャンプ+』などを、どう連動させてコンテンツを作っていくか。新陳代謝が進むと思います」(同)
 現在、『週刊少年ジャンプ』の作品で不動のトップを走るのは『ONE PIECE』だ。コミックスが84巻にもなる長期連載だが、いまだに初版360万部を誇る他に例のない作品だ。
「よく第2の尾田栄一郎を探せと言いますが、これはそう簡単ではない。今年『ONE PIECE』は20周年を迎えるのですが、今でも尾田さんは1号1号大変なエネルギーを費やし、神経をすり減らしながら作品を描いている。それがこのマンガの人気を支えているのだと思います」(同)
アニメ化などで期待の作品も次々と…
 以前はその『ONE PIECE』に水をあけられているとはいえ、100万部前後の初版部数を誇る作品が幾つかあったのだが、それが相次いで連載終了となった。現在、不定期掲載の『HUNTER×HUNTER』を除けば2位につけているのが『ハイキュー!!』だ。そしてこの1年、急速に人気を伸ばしたのが『僕のヒーローアカデミア』だ。1年前は本誌のこの特集に掲げるコミックス初版部数ベスト15(P27参照)に登場していなかったのだが、昨年春から始まったアニメ化で弾みがつき、今年も4月からアニメの第2シリーズが放送される。
「『僕のヒーローアカデミア』のアニメは半年間放送予定で、おそらく今年はコミックス初版100万部を突破するでしょう。先ごろ発表された読売新聞社などが主催のSUGOI JAPAN AWARD 2017でも『僕のヒーローアカデミア』が、マンガ部門の1位に選ばれました」(同)
 その4月から始まるアニメは、昨年はMBS/TBS系の日曜午後5時、いわゆる「ニチ5」と言われる枠だったが、今回はその枠がなくなったため読売テレビ/日本テレビ系の土曜5時の枠に移行した。異例のケースだが、この話は別稿のアニメの項で説明しよう。
 同じく4月からアニメが放送される作品としては『BORUTO―ボルト―NARUTO NEXT GENERATIONS』が挙げられる。『NARUTO』の主人公の子どもを描いた作品で、『週刊少年ジャンプ』に月1のペースで連載されている。
 そのほか今人気上昇中なのが『ブラッククローバー』『約束のネバーランド』と『鬼滅の刃』。鈴木常務は、今年中にその3作品を50万部タイトルにしたいという。
 それ以外に期待がもたれているのは、『黒子のバスケ』を描いていた藤巻忠俊さんの新連載『ROBOT×LASERBEAM』だ。少年誌には異例のゴルフマンガだが、作品の評価が高く、連載第1回は『週刊少年ジャンプ』の表紙を飾っている。
「今年に入って次々と新連載を立ち上げ、“春の6連弾”と呼んでいるのですが、その6本目がこの作品です。3月に『黒子のバスケ』が映画化されることなどいろいろなタイミングも考えました。
 考えてみれば、『週刊少年ジャンプ』はアンケート主義による競争原理を取り入れたり新人発掘のためにいろいろな試みをしてきたのですが、このところ『ハイキュー!!』にしろ『僕のヒーローアカデミア』にしろ、その作家にとって2本目3本目の作品で大ヒットするケースが目立つ。藤巻さんもデビュー作の『黒子のバスケ』が大ヒットしたわけですが、今回の2作目も期待できる。1作目を終えた作家が次をめざしてコンペを行い、2作目3作目でさらにヒットを出すという成長スタイルはこれから増えていくような気がします」(同)

アニメ化などで期待の作品も次々と…
 以前はその『ONE PIECE』に水をあけられているとはいえ、100万部前後の初版部数を誇る作品が幾つかあったのだが、それが相次いで連載終了となった。現在、不定期掲載の『HUNTER×HUNTER』を除けば2位につけているのが『ハイキュー!!』だ。そしてこの1年、急速に人気を伸ばしたのが『僕のヒーローアカデミア』だ。1年前は本誌のこの特集に掲げるコミックス初版部数ベスト15(P27参照)に登場していなかったのだが、昨年春から始まったアニメ化で弾みがつき、今年も4月からアニメの第2シリーズが放送される。
「『僕のヒーローアカデミア』のアニメは半年間放送予定で、おそらく今年はコミックス初版100万部を突破するでしょう。先ごろ発表された読売新聞社などが主催のSUGOI JAPAN AWARD 2017でも『僕のヒーローアカデミア』が、マンガ部門の1位に選ばれました」(同)
 その4月から始まるアニメは、昨年はMBS/TBS系の日曜午後5時、いわゆる「ニチ5」と言われる枠だったが、今回はその枠がなくなったため読売テレビ/日本テレビ系の土曜5時の枠に移行した。異例のケースだが、この話は別稿のアニメの項で説明しよう。
 同じく4月からアニメが放送される作品としては『BORUTO―ボルト―NARUTO NEXT GENERATIONS』が挙げられる。『NARUTO』の主人公の子どもを描いた作品で、『週刊少年ジャンプ』に月1のペースで連載されている。
 そのほか今人気上昇中なのが『ブラッククローバー』『約束のネバーランド』と『鬼滅の刃』。鈴木常務は、今年中にその3作品を50万部タイトルにしたいという。
 それ以外に期待がもたれているのは、『黒子のバスケ』を描いていた藤巻忠俊さんの新連載『ROBOT×LASERBEAM』だ。少年誌には異例のゴルフマンガだが、作品の評価が高く、連載第1回は『週刊少年ジャンプ』の表紙を飾っている。
「今年に入って次々と新連載を立ち上げ、“春の6連弾”と呼んでいるのですが、その6本目がこの作品です。3月に『黒子のバスケ』が映画化されることなどいろいろなタイミングも考えました。
 考えてみれば、『週刊少年ジャンプ』はアンケート主義による競争原理を取り入れたり新人発掘のためにいろいろな試みをしてきたのですが、このところ『ハイキュー!!』にしろ『僕のヒーローアカデミア』にしろ、その作家にとって2本目3本目の作品で大ヒットするケースが目立つ。藤巻さんもデビュー作の『黒子のバスケ』が大ヒットしたわけですが、今回の2作目も期待できる。1作目を終えた作家が次をめざしてコンペを行い、2作目3作目でさらにヒットを出すという成長スタイルはこれから増えていくような気がします」(同)

『ジャンプGIGA』や「ジャンプ+」の連載も
『週刊少年ジャンプ』の今後を支える作品をどう作っていくかという課題をめぐっても今後いろいろな施策を考えているという。そのひとつが春に4カ月続けて発行予定の増刊『ジャンプGIGA』だ。
昨年夏に続いての発行だ。
「4回の連載で手応えを見ようということで4回分を仕込んでもらっています。昔は『少年ジャンプ』の連載会議で掲載作品を全て決めるという1回勝負だったのですが、今は新人の発表の場として増刊を生かしていこうということです。
 また『ジャンプスクエア』からも『プラチナエンド』『憂国のモリアーティ』など好調タイトルが出ています。デジタルの『ジャンプ+』からも、コミックスにして10万部を超える作品が次々と出始めています。
 それら4つの媒体から新しいコンテンツをどうやって生み出していくか、というのを今後は意識的に取り組んでいこうと思っています」(同)
 特にこの間注目されるのは、『ジャンプ+』のデジタル発の作品から次々とヒットが出ていることだ。
「例えば『青のフラッグ』という作品はネットでは大きな評判になっており、4月にコミックスの第1巻が出るのですが、恐らく重版を重ねるのではないかと期待されています。もともと『週刊少年ジャンプ』で連載を描いていた作家によるもので、かつて担当していた編集者が今『ジャンプ+』にいるのでそこで連載が始まったのですね。
 それから『終末のハーレム』もデジタルファーストの作品ですが、第2巻のコミックスが23万部くらい行っています。そのほかも『カラダ探し』などコミックスで10万部を超える作品がこのところ何本も出ています。
 いま『週刊少年ジャンプ』で連載中の『約束のネバーランド』も原作の白井カイウさんと作画の出水ぽすかさんのお二人は最初『ジャンプ+』でコンビを組み、本誌で連載することになったわけです」
 これまで集英社でデジタルファーストのヒットといえば青年誌系の「となりのヤングジャンプ」で連載された『ワンパンマン』が知られていたが、少年誌系の『ジャンプ+』からも続々とヒットが出始めているというわけだ。
 集英社では、今年は『ONE PIECE』20周年、『ジョジョ』30周年であるほか、来年が『週刊少年ジャンプ』50周年に当たるため、7月から「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展」など、周年企画が始まるという。
「いろいろな意味で今年は勝負の年になるでしょうね」と語るのは、取締役の隅野叙雄コミック販売部長だ。
「コミックスにしても既刊の重版比率が減少しています。アニメ化なども放送すれば必ずヒットするわけではありません。最近は書店さんからもどの作品を売ったらよいかわからないという声も聞きます。
 そこでこの2月に主要書店法人のマンガ担当のバイヤーの方々に集まっていただいて、動画等も使って今後のいち押し作品についての説明を行いました。従来は人気作品を中心に売っていけばよかったのですが、これからは作品を皆が育てていくことも必要です。営業スタイルも大きく変わらないといけないと思っています」

『進撃の巨人』期待のアニメ第2期
 集英社の少年マンガで『ONE PIECE』が別格の存在だとしたら、講談社でそれに当たるのは『進撃の巨人』だろう。コミックスが初版200万部を誇るのだが、この1年間で初版が100万部を超えているのは、業界全体でこの2作品だけだ。
『進撃の巨人』がアニメ化をひとつのきっかけに大きく伸びたのは知られているが、今年4月からそのアニメの第2期がTOKYO MXやMBSなど全21局で放送される。講談社としてもそうだが、書店も大きな期待を寄せているという。講談社第三・第四事業販売部の高島祐一郎部長に話を聞いた。
「『進撃の巨人』は4月に出る第22巻が最新刊ですが、アニメ化にあわせて全国の書店さんに第1巻から増売をお願いしています。各巻10万から20万部くらい上乗せしてほしいというのが目標です。この作品はデジタルでもかなり売れるのが特徴で、そちらも期待しています」
 同作品は『別冊少年マガジン』の連載だが、毎年4月、8月、12月に、コミックスの新刊発売にあわせて雑誌ではコミックスの続きの話が掲載される。つまりコミックス新刊が出るタイミングで、続きを『別冊少年マガジン』で読めるという販売戦略だ。
 いまや『進撃の巨人』は世界中で読まれている作品になっているが、海外展開については別稿のライツ事業に触れた原稿で紹介しよう。
『週刊少年マガジン』も雑誌は部数を減らしているが、コミックスでは『七つの大罪』『ダイヤのA act2』『FAIRY TAIL』『あひるの空』『はじめの一歩』など長期連載作品が売れ続けている。『はじめの一歩』はコミックスが116巻という異例の連載だが、いまだに1巻から重版がかかっているという。
 逆に言うと、新作の大ヒットが出ていないのが課題だ。
「今伸びている作品といえば、『聲の形』の作者による新連載『不滅のあなたへ』でしょうか。年明けにようやくコミックスの第1巻が出たばかりですが、10万部を超えるヒットとなっています。今、新しい作品で20万部を超えるものがなかなかなくて、そこがひとつの壁になっていますね」(高島販売部長)
 ちなみに『聲の形』は昨年、劇場アニメ映画が大ヒットしたことで知られる。既にその時点で連載は終了していたが、全7巻のコミックスは累計90万部という大きな増刷となった。

『少年シリウス』から新しいヒットが次々
 そのほかこのところコミックスのヒットが続いて新たに注目されているのは『月刊少年シリウス』だ。
「創刊から12年経つのですが、ここへきてコミックスがレーベルとして認知されてきたといえます。
 例えば『転生したらスライムだった件』という作品は、第1巻が初版3万部でスタートして28万部まで売り伸ばしました。第2巻も初版14万部から増刷を重ね26万部に達しています。これは『小説家になろう』という投稿サイトに端を発した“なろう系”と呼ばれる小説のコミカライズですが、“異世界転生”がキーワードで今ブームになっているのです。ある日突然、異世界へ行ってしまうという話ですね。『シリウス』はラノベをコミカライズした作品も多いのですが、そのほかにもウェブ連載の『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』のコミックスが10万部くらいになっています。これは講談社ラノベ文庫の人気作をコミカライズしたものです。
 そしてもうひとつヒットしているのは“擬人化もの”と呼ばれていますが、例えば『はたらく細胞』という作品が20万部くらいに達しています。細胞を擬人化したという作品です。
『シリウス』の連載としては『夜桜四重奏 ヨザクラカルテット』という作品が、何年か前、アニメ化との連動がうまくいってコミックスを売り伸ばしたのですが、その頃から棚取りもうまくいくようになりました」(同)

6割の連載が入れ替わった『週刊少年サンデー』
 少年誌が部数を落としているという事情は小学館の『週刊少年サンデー』も同じだ。同誌の場合は、一昨年に新編集長が就任にあたって、連載作品を大幅に入れ替えることを宣言。実際に6割ほどの連載が入れ替わった。その新連載からようやくコミックスでヒットが幾つか出始めているのが現状だ。佐上靖之第二コミック局チーフプロデューサーがこう語る。
「新連載からのヒットとしては『週刊少年サンデー』連載の『古見さんは、コミュ症です。』が昨年9月に第1巻が出て、累計23万部まで売れています。『ゲッサン』連載では『からかい上手の高木さん』がやはり昨年第1巻が出て累計27万部。新連載で伸びているのが2つとも女性が主人公の作品というのはたまたまではあるのでしょうが、時代を感じさせますね」
『週刊少年サンデー』をめぐって最近話題になったのは、3月に発売された『境界のRINNE』35巻で高橋留美子さん作のコミックスが全世界累計発行部数2億冊突破、というニュースだ。高橋さんは『うる星やつら』『めぞん一刻』『犬夜叉』などの名作で知られるマンガ作家だが、その大ベテランがいまだに現役として週刊マンガ誌に連載を描いているのは特筆すべきことと言える。3月22日発売の『週刊少年サンデー』17号では2億冊突破を記念して高橋さんの完全新作の読切作品『千年の無心』が掲載された。高橋さんが同誌で読切作品を発表するのは18年ぶりという。
 4月15日からは『名探偵コナン』の劇場アニメ映画も公開されるが、同アニメ映画は昨年63億円の興収をあげて過去最高を記録した。連載もアニメ映画も長年続いているが、いまだにこれだけ安定した人気を維持しているというのは驚異的と言えるかもしれない。
『名探偵コナン』は小学館のコミックス第1位を保っているが、初版100万部には至っていない。初版100万部を突破した『週刊少年サンデー』の作品といえば『銀の匙』だが、同作品が休載している現在では、ミリオン作品が出ていないのが現状だ。
「100万部タイトルが出るかどうかで雰囲気は全然違いますから、何とかヒットを出したいと思っています」と佐上チーフプロデューサーは語る。
 昨年は「サンデーうぇぶり」という新たなデジタルサイトもスタートした。デジタル発の新作を開発していこうという試みだ。