マレー沖海戦(下) チャーチル絶句させた英不沈艦撃沈…「大艦巨砲」から「航空主兵」へ、先鞭つけたのは皮肉にも日本だった NO.1

マレー沖海戦(下) チャーチル絶句させた英不沈艦撃沈…「大艦巨砲」から「航空主兵」へ、先鞭つけたのは皮肉にも日本だった  NO.1

 

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沈没するプリンス・オブ・ウェールズから逃げようとする乗組員

 3万5千人の兵を乗せてマレーに向かう日本軍の艦船を撃滅するため昭和16(1941)年12月8日夜、シンガポールを出たイギリスの最新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」を発見した日本海軍機は度重なる攻撃を仕掛けた末、撃沈する。

イギリス首相も嘆かせるほどのあえない最期だった。

日本の完全勝利に終わったこの戦いは、真珠湾攻撃とともに当時、大艦巨砲主義が主流を占めていた世界の軍部を驚かせ、来るべき航空戦時代のきっかけをつくった。

新鋭艦追撃戦

「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」の2隻の戦艦は日本海軍にとって、ハワイ・真珠湾のアメリカ戦艦以上の厄介な存在だった。

特に「プリンス・オブ・ウェールズ」の主砲の砲弾は日本の同クラスの艦より遠くに飛び、装甲が分厚い。

しかも逃げ足が速い。

つまり新鋭戦艦と主砲の口径が同じ36センチ砲を持つ日本の艦では攻守ともに歯が立たない。

40センチの口径を持つ「長門」級のみが互角に戦えるが、速度が新鋭戦艦よりも遅いのが弱点となった。

このため艦隊がぶつかり合った場合、日本は数にものをいわせて小さい高速艦艇が夜闇に紛れて接近戦を挑むしかなく、それでも相当の犠牲を覚悟の上という悲壮感漂うものだった。

とにかく日本側は周辺の艦船と合流しながら敵を追うが、悪天候でなかなか新鋭艦の姿をとらえることができない。

そんな中、10日午前1時22分に海上を航行中の伊58潜水艦の前に突然1隻の艦艇が現れた。

 

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 約600メートルという至近距離でイギリスの駆逐艦と出くわしたのだが、驚くより先に潜航したため、気づかれずにすんだ。

そこであとをつけてみると、その先に巨大戦艦の姿が待っていたのだ。

伊58は発見位置を送信すると追跡を継続。

5本の魚雷を発射してみたが、相手も高速のために1本も命中せず。

以後は位置を知らせる電文を3度送るも離されたため、発見から5時間後に追跡を断念する。

続いて、伊58の電文をもとに艦隊も索敵を始めるが燃料切れが近いために引きあげ、そのあとを託されたのが、サイゴン(現在のホーチミン)に基地を置いていた松永貞市少将率いる陸上攻撃機(陸攻)部隊だった。

敵主力見ユ

「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」を中心とした東洋艦隊は、日本兵を輸送中の艦船を撃滅するため、マレー半島の東にあるアナンバス島に集結しようとした。

ところがシンガポール北方のクアンタンに日本軍上陸の知らせを聞くと進路を西に変更し、24ノット(時速約45キロ)で上陸地点へ向かっている最中だった。

10日午前6時過ぎ、松永少将は索敵のため9機の96式陸攻を出し、1時間半後から3次にわたり陸攻を出動させる。

こちらは「発見後、ただちに攻撃せよ」の命令を受けていたため、投入した85機は爆弾あるいは魚雷を装着していた。

東洋艦隊はクアンタン上陸の情報が間違いだったことを知ると、いったんシンガポールに引き揚げるため日本軍が敷設した機雷原を東に回るなど複雑な経路をたどった。

 

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午前11時45分、クワンタン沖を飛行中の帆足正音(ほあしまさと)予備少尉の3番索敵機が正午前、高度3000メートルの上空で駆逐艦3隻を伴う2隻の戦艦を発見する。

「敵か味方か」。それを確かめるため高度を落とすと、艦隊から対空砲を撃ってきたため敵と確信した帆足機は、「敵主力見ユ」の一報とともに正確な位置の電文を打つと、攻撃機が次々と現場に急行した。

不沈艦撃沈

最初に到着した96陸攻の8機は爆弾1発を「レパルス」に命中させるが、魚雷はすべて回避される。

「レパルス」は2度目の魚雷攻撃もかわすなど、歴戦の艦らしく、ウィリアム・テナント艦長は巧みな操艦を見せた。

だが午後1時半過ぎに到着した26機の1式陸攻の攻撃をかわすことはできなかった。

1式陸攻は運用から半年しかたっていない新鋭機。速度、航続距離ともに96式陸攻を上回っていた。

イギリスの戦艦は対航空機用の兵器として40ミリ対空砲を装備していたが、強力な火力を持つ半面、導入から25年がたち、たびたび故障に悩まされた。

この結果、徐々に追い詰められた「レパルス」の左舷に命中した魚雷で機関室が水浸しになると速力は低下。

ついに左右から攻める魚雷攻撃をよけることができず、数本が命中して午後2時過ぎに沈没した。

 

伊58潜水艦

一式陸攻

 

【歴史事件簿】マレー沖海戦(下) チャーチル絶句させた英不沈艦撃沈…「大艦巨砲」から「航空主兵」へ、先鞭つけたのは皮肉にも日本だった

マレー沖開戦に参加した伊58潜水艦