第1次ソロモン海戦(下) 山本五十六が激怒した重大ミス 戦果に満足し第1目標「米輸送船団」逃す NO.1

第1次ソロモン海戦(下) 山本五十六が激怒した重大ミス 戦果に満足し第1目標「米輸送船団」逃す NO.1

 

(1/5ページ)【関西歴史事件簿

第1次ソロモン海戦で沈没したアメリカ巡洋艦「ビンセンス」

 昭和17年8月8日夜、連合国軍によるガダルカナル島上陸を阻止するため、ソロモン海域に突入した日本艦隊の8隻(第6、第18戦隊)は、連合国軍の艦艇を吊光弾(ちょうこうだん)や探照灯(サーチライト)などで照らし出しては攻撃を加え、次々と沈めていった。

日本の完勝といえる戦いだった。

だが、そんな鮮やかな戦果の裏には、山本五十六連合艦隊司令長官も激怒したといわれる重大な失敗が隠されていた。

日本艦隊の速攻

連合国軍は20キロ以上先まで見通せるレーダーを装備する艦を保有していた。

だが敵と味方の見分けがつかないほどの性能だったらしく、探知した日本機も連合国軍は味方とみていたようだ。

そんな中、日本艦隊の8隻は午後11時半に突入を開始した。

風のない曇り空だった。

重巡洋艦「鳥海」は突入直後に発見した連合国の駆逐艦に4500メートルの距離から雷撃するが、はずれる。

あくまでも目標は輸送船だったため、突入直前にも目視した艦をやり過ごしたように、攻撃に気付かなかった駆逐艦をこれ以上は攻撃しなかった。

そして、サボ島とガダルカナル島の間の狭い海域を進む日本艦隊は右舷に数隻の艦影を発見した。

連合国軍の上陸部隊を三方に分けて護衛する3艦隊のうちの南側に配置された部隊だった。

11時43分、日本軍の水上偵察機が投下した吊光弾が降りるにつれて、闇に包まれていた艦艇の姿が現してきた。

パッと突然に広がった真っ白な明かりに連合国側が驚いた一瞬の隙をつき、鳥海は重巡「キャンベラ」を雷撃し、キャンベラは炎上した。

後続の「青葉」「加古」「衣笠」の重巡3隻はアメリカ重巡「シカゴ」とアメリカ駆逐艦「パターソン」を砲雷撃し、数発の命中を確認した。

 

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 日本軍からの攻撃前、指揮を執るイギリス海軍のV・A・C・クラッチレー少将が作戦会議で艦隊を離れていたこともあり、指揮も統一性を欠いた。

衣笠のあとに続いた重巡「古鷹(ふるたか)」は、炎と猛煙をあげ迫ってきた連合国軍の艦を左に避けつつ攻撃。古鷹に続いた軽巡「天龍」も探照灯でパターソンを照らしながら砲撃し、艦橋などに命中させた。

戦闘時間は6分。

その間に南方部隊5隻のうち3隻にダメージを与えた日本艦隊だが、攻撃はこれで終わらなかった。

北方部隊も血祭り

サボ島の南から北へ転進した鳥海の前方に別の艦隊が現れた。

島の北側に配備された敵艦隊だった。

鳥海は探照灯で照らすと、アメリカ重巡「ビンセンス」「アストリア」など5隻の艦影が現れた。

南側の艦隊の援護に向かっていたのだ。

ビンセンスは鳥海を味方と思ったようで、「味方なり」などとする信号を送っている。

これに対して鳥海など4隻の重巡は11時53分、アストリアなどへ容赦ない砲撃を始めた。

最短で3000メートルという至近距離から、20センチ砲だけでなく、航空機が相手の高射砲や機銃も水平に撃ち合う乱戦ぶりだった。

北側の艦隊は敵、味方の見分けがつかなかったため攻撃も積極性に欠け、鳥海の主砲のひとつを破壊したのみだった。

突撃時は一列に進んだ日本艦隊も古鷹が最初の交戦で敵艦をかわそうと進路変更し、天龍と夕張が続いたため、鳥海など4隻と二手に分かれることになり、偶然にも連合国の艦隊を挟み撃ちにする形で進んだ。

 

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 この結果、日本艦隊に挟撃されて、左右から攻撃を受けたアメリカの重巡「クインシー」とビンセンスはたちまち炎上し、9日午前1時までには沈没した。

 この戦いは、得意の夜戦を駆使した日本艦隊が連合国軍の重巡洋艦6隻のうち4隻を撃沈し、1隻を大破させるという大戦果をあげて終了した。

 9日午前0時23分、艦隊司令の三川軍一中将が「引き揚げ」を命じると二手に分かれていた8艦は再び突入の時と同様、アメリカ空母を警戒しながら一列となってサボ島から遠ざかっていった。

山本五十六の怒り

 ところが、鳥海の艦橋内では、サボ島の北方に集結した時点で反転するか、しないかで論議が起こっていた。

 第1目標は、連合国輸送船団に攻撃を加えて上陸を阻止すると同時に、日本軍陸戦隊を島へ上陸させることだったはず。

だが陸戦隊を乗せた船はアメリカ潜水艦の攻撃で沈んだうえ、連合国の輸送船攻撃は手つかずのままだったからだ

 このまま連合国軍の輸送船を放置したのでは、ガダルカナル島の飛行場が相手の手におちるのは時間の問題。

鳥海艦長の早川幹夫大佐は「転身すべき」と強硬に三川中将にくいさがっていた。

しかし、三川中将の決心は変わらなかった。

 夜中とはいえ、護衛の戦闘機がないまま決死の覚悟で敵中に突っ込んだ日本艦隊にとっては、予想をはるかに超えた戦果だった。

 しかしアメリカ空母の動向も気になったのか。

余力を残しながら、「無傷のままで」という、真珠湾攻撃の時に第一目標のアメリカ空母を攻撃せず、反転した南雲忠一中将と同じ心境になったのかもしれない。

 

【歴史事件簿】第1次ソロモン海戦(上) 作戦名「殴り込み」 ガダルカナル奪回狙い、得意の“夜戦奇襲”仕掛ける

ガダルカナルの飛行場。のちに「ヘンダーソン」と名付けられた