[映画]少女に世の中の悪意をぶつけた地獄絵図『無垢の祈り』が、色々あったけどやっと見られるぞ

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(公式サイトより)

映画『無垢の祈り』見ました。

『無垢の祈り』公式サイト

この映画、中身の問題で海外での映画祭は断られまくり、日本でも上映ができるかどうか、みたいな感じだった作品。

R18指定を付けた上で、国内でわずかしか上映館がなかった状態。もちろんソフト化もしてない。

2016年9月、日本初「カナザワ映画祭2016」でプレミア上映された時は、立ち見がでていたそうな。

 

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なにがまずかったかって、十中八九10歳の子が虐待されまくること。

とはいえトレーラーの映像がすごすぎて、この映画が幻になってしまうにはあまりにもったいない。

 

どうしても見たいと思っていた所。最近ついに、vimeoのペイビューで見られるようになってるじゃないですか!

インターネット社会ありがとう!

『無垢の祈り』vimeoオンデマンド

 

「少女」という言葉に揺れる人、虐待について考えのある人は、お金払って見る価値、あります。ぜひ。

あ、原作読んでいたのもあって、ぼくはそれほど残虐ではないと思いました。どっちかというと寂寥感と少女力のパワーがすごい。

ただ、バイオレンスとか虐待が苦手な人は、見てもいいことないので、見なくていいです。

 

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10歳の少女フミ(演:福田美姫)。学校でいじめられ、義父に殴られる日々。

母親も義父に激しいDVを受けていて、逃避のために新興宗教にのめりこんで、フミを助けてくれない。

工場が立ち並ぶ中、自転車で廃工場・廃ビルに入り込むフミ。

そのころ、町では連続猟奇殺人事件が起きていた。

殺害現場をチェックして回って、殺人犯に「アイタイ」とチョークで文字を残す。

 

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福田美姫の演じるフミが、死ぬほどかわいいのですよ。

 

スカートからのぞく膝小僧は、成長過程で出っ張っており、スネとふくらはぎは細くて、子どもっぽい。

長い髪の毛からのぞく目は、絶望の塊でまったく光がない。妙になまめかしい。

本人はそう見られるのがいやなのに、ガンガンに「少女」の匂いが漏れている。

ところどころで余計な動きをしてフラフラするのが、やたら幼い。

か細さと奇妙な色気を丁寧に映しているので、彼女の姿がめちゃくちゃ脳に焼き付きます。

 

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それが、地獄でしかない。

父親は彼女に性的な視線をギラギラ向けます。あげくレイプにまで至ります。

通学の最中にはペドフィリアの中年に絡まれ、性的いたずらを受けます。

歩いているだけで、見られる苦痛。

 

この映画、「女に生まれたらその時点で不幸」「男は基本クソ」という表現がとても多い。いい人がでてこない。

フミだけじゃなく、母親も体中あざだらけ。義父の愛人も振り回されっぱなし。もう一人出て来る女性も。

助けてくれる人がいなさすぎる。逃げることもできない。

ブルースじゃなくてノイズです。

 

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画面がずーっと灰色。

曇天模様の空、廃工場、廃ビル、薄汚い自宅。

世界に色がついていないかのような撮影の仕方が多いです。

83分、ずっと息苦しい。

 

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リアル町田ひらく作品、というのをネットでみましたが、まさにそのとおりだなあと。

少女は美しく、世界ははきだめのように汚い。あらゆるものが少女を搾取して食い尽くす。希望の光なんてものはない。

「絶望」する少女の演技は、見事すぎました。

 

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「あるんだろうな」なフミまわりの虐待設定に対して、「なさそう」な殺人鬼のファンタジーめいた描写。

ここは賛否わかれるところでしょう。

殺人鬼の犯行がわりと雑なんですよ。動機もよくわからない。

 

けれど、これは虐待された少女の物語なので、殺人鬼に関してはあんまり掘り下げる必要は無い。

それよりも「殺人鬼は殺してくれる」というファンタジーが、彼女の心の唯一の逃げ場なのがやりきれない。

神様に頼るでもなく、警察に助けを求めるでもない。逃げる手段は、殺すことのできる人間しかいない。

 

ラストどうなったのかは、よく見るとわかるし、わかると嫌な気持ちになれます。

 

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(公式サイトより)

スポンサーが見つからず、全予算を亀井享監督が出して作ったという作品。配給会社も見つからなかった。自主制作映画としてやらざるをえなくなった。

こう聞くと「みんなが避けるって、どんだけ残酷なのかな!」とワクワクしてしまうのですが、別にグロテスクや悪趣味を楽しむ映画ではないです。

とはいえフミがボコボコに殴られ、股間をまさぐられる様子を見ていると。うーんまあ、大ヒットする作品とはとても思えない。

だからこそ、今見ておく価値はある。こういう作品を強く求めている人は、一定数いるってことがわかるはず。

 

児童虐待問題の解決できなさを描いた作品、という見方はもちろんアリ(淡々と描いているので、説教臭さは皆無です)。

フミの逃げ込む場所のなさは、現実的すぎてウウムとうなってしまう。

 

同時に、絶望を見せられることで、不思議とグッと自分を立て直せるようになる効果が強い作品。

悲しいんだけど、ホッとする。

多分見ていたぼくの中の、絶望のような何かを、フミが引き受けてくれるからだと思う。

 

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

原作はあこちらに収録。

中身はちょっと違うけど、大体おなじ。