活撃/刀剣乱舞:第10話『忠義の向かう先』感想

夜梅の香りは忠義を惑わせる、どっこい終わってなかった坂本龍馬編、国広危うしな第10話であります。
前回陸奥守が、己の未練に綺麗に決着を付けたのはあくまで呼び水、国広と兼定の『元の主』土方歳三を前に、二人の生き様が試されるエピソードとなりました。
既に答えを見つけた陸奥守、刀剣男子として歴史に向き合った経験を守り刀に、感情を涙として溢れさせた後、隊長としての顔を取り戻した兼さん。
闇と光の淡いで悩み、審神者の刀としての経験の浅さが危うい決断へと誘う国広。
新撰組鬼の副長の腰に、大小二刀分け難く結び付けられていたはずの二人の道が別れることで、刀剣男士の使命と危うさが明らかになるエピソードでした。

というわけで、龍馬と陸奥守の関係を綺麗にまとめ上げた先週からバトンを引き継ぎ、国広と兼さんが『元の主』との関係に悩む話となりました。
先週ラストシーンで見つめていた闇が、そのまま国広を当事者に飲み込み、迷いに引き込むような展開。
先週以外にも、過去の物語と響き合う要素が多く、そこから何故今国広がああいう迷いの中にいるのか、未来にどんな景色が広がるかを考えることが出来るお話だったと思います。

これまで兼さんの女房役として、悩めるリーダーを陰日向に支えてきた国広。
今回は彼が主役となり、刀剣男士皆が悩んできた(悩んでいる)矛盾に向かい合う話となります。
兼さんがグダグダ悩む話は第8話で(一応)終わっているので、ここで主客逆転して国広が表に立ってくるのは、とても良いと思います。
兼さんにカメラを回していると拾いきれないテーマに光を当てるというだけではなく、主役として道に悩む特権を巧く分け与えて、支えるだけではない平等な関係が生まれるからね。

その真っ直ぐな頼もしさに忘れてしまいがちですが、思い返せば国広は新兵。
物語の開始と同時に『主命』を受け、実戦に飛び込んだルーキーです。
立場的には第一部隊における骨喰と同じであり、周囲に支えられつつ悩む特権を持っているのも、第8話と似通っています。
が、第一部隊ほど周囲に目配せする余裕のない第二部隊は、国広の明るい笑顔の奥にある淀みに、なかなか気づけません。

先週陸奥守が振りほどき、今回兼さんも思い切った誘惑。
人型の付喪神であり、時間超越者でもある『刀剣男士』となったからこそ可能な、運命改変による『生命』の保護。
込められた想いの強さ故に超常の力を手に入れた刀剣男士ですが、それは暴走の引き金ともなる諸刃の刃。
国広が今回、幾度となく光と闇の中間点に立ち、最終的に夜の側に飛び込んでいく姿というのは、国広個人の迷妄であり、同時に刀剣男士全てに通じる『宿命』なのでしょう。
それは勝てるものもいれば負けてしまうものもある、答えが用意されていない問いかけなので、国広が代表して闇に近づいていく(そして帰ってくる)必要があるわけです。


今回国広が悩む問題は、先週陸奥守が巧く回避できた問題とつながっています。
寺田屋事件では『主命』はかつての主の『生命』を守ることと繋がっていましたが、今回は佐幕と勤王に立場を変え、『主命』を守れば土方の『生命』は死に近づいていく。
陸奥守が迷わなくても良かった問題に直面させられる辺り、国広の悩みは少し難度が高いのかもしれません。

愛する人を守りたい』という、人として当然の情。
これまでの物語を見ても分かる通り、それは困難に立ち向かう力になると同時に、道を違える誘惑にもなります。
これに負けてしまえば、己のほしいままに歴史を書き換え、名もなき人の命を必要経費と切り捨ててしまう時間遡行軍と、刀剣男士はおなじになってしまう。
なので、『使命』の名のもとに情を押し殺し、あるいは別の形で納得をして、刀剣男士であり続けなければいけないのです。

国広が『刀剣男士』であり続けられないのは、彼がルーキーであることが大きく影響しています。
『刀剣男士』として戦い、守ることが出来るもの。
あるいは戦わなければ踏みにじられてしまうものをそこまで経験していないので、己の中の情と使命を天秤にかけると、情に傾いてしまうわけです。
これは『審神者の刀』として自分を定義できていないからでもあり、『元の主』の腰に収まっていた過去に引きずられてもいる。
国広は人の形をした『刀剣男士』としての新しい生ではなく、『刀剣』という道具的存在だった真希戻らない過去に捕らわれてしまっているのです。

『生命』さえ守れば、生きている意味が生まれる。
バランスを失った国広は『生命』の維持を過大視し、死にゆく人の『宿命』を忘れ去ってしまっています。
ここら辺の危うさは陸奥守の特徴だったわけですが、先週上手くバランスを取った彼から、悩める立場と一緒に移ってきた感じですね。
たしかに命は大事で、今回も兼さんは歴史の歪みが産んだ火事に飲み込まれ、それが失われる痛みに悩んでたりもします。
刀剣男士はみな善人でありヒーローなので、掛け替えのない命の重さはしっかり分かっているわけです。

しかし第3話で名もなき志士が言っていたように、命を惜しむことが即ち士道を全うすることではないし、あるいは第8話で老母が問いかけていたように、生き死には侍にとって当たり前のことでもない。
己のなすべきことを見定め、刃境一寸下の地獄に決意を持って身を躍らせることこそ、武士(というか人間)の命の輝きが歴史に刻まれる条件となります。
歴史を捻じ曲げ、罪のない人を犠牲にただ生きて、土方歳三は、あるいは坂本龍馬は生きた証を残せるのか。
『生命』『主命』に続く3つめの『命』たる『天命』を、歴史の逸脱者である刀剣男士はしっかりと理解し、死にゆく人間の宿命と尊厳を大切に背負いながら、戦い続けなければいけないわけです。
それはとても厳しい生き様ですが、超常の力と使命を帯びた彼らが、絶対に乗り越えなかければ行けない生き様でもある。


国広の悩みは刀剣男士全てのものなので、一足先に答えを出した陸奥守も真剣に、対等に答えます。
京都の坂道を降りる時、闇の暗い場所、心の深い場所に一歩ずつ分け入る時、国広と陸奥守は坂道を降りています。
先行する陸奥守は『先に答えを出したもの』として優越すると同時に、傾斜に身長を吸い取られ、国広と対等な視線で語り合う。
『お前の悩みは俺の悩みでもあるし、みんなの悩みなんだぞ。だから抱え込んじゃだめだぞ』というメッセージが、無言で伝わってくるレイアウトです。

幸か不幸か、陸奥守の言葉を聞いても国広の悩みは晴れず、状況は進んでいきます。
青空広がる正午から、血の色の夕日が広がる黄昏時、紅白梅が自ずと光を発する夜へと、時間は移ろっていく。
太陽の光の中でも国広には常に陰りがつきまとい、刀剣男子と時間遡行軍の危うい境界線を踏んでいる彼は、第二部隊の仲間とは少し遠い場所に配置されています。
旅籠の作戦会議でも、露骨に一番暗い場所にポツネンと配置されていて、嫌な予感がしたもんです。

情に傾いてしまった国広に対し、情を抱えつつも『使命』の重さを理解し、『元の主』に立ち向かうことを決めた兼さん。
同じ思い、同じ立場のはずの相棒が向こうに回ってしまったからこそ、国広は己が孤独だと思い込み、舞台を離れるラストシーンに繋がったのかもしれません。

しかし兼さん根っこが乙女なので、当然土方さん好き好き病患者であり、国広と同じ病にかかって入るのです。
そうじゃないと、あの美しい涙は流れんでしょう……推しが貴すぎてすぎて泣いちゃうって、土方の限界ヲタクかなにかか。
体を焼く情の炎に判断を焼き尽くされないのは、一つには隊長としての使命。
これまでの物語の中で沢山失敗し、沢山絆を確認してきた体験が、兼さんを『刀剣男士』として鍛え上げ、その生き様を全うさせる道を選ばさせています。
そこには審神者への忠義があり、時間の守護者としての天命があり、部隊の仲間への責任がある。
国広にそれがないわけではないんですが、天秤をひっくり返すほど重いものではない……となるのにも、ルーキーという立場は大きく影響していますね。

もう一つはここまで兼さんに時に反発し、時に和合してきた陸奥守の存在かな、と思います。
坂本龍馬土方歳三、思いの対象は違えど、佩刀としての思い入れを共有し、かつそれを乗り越えてきた陸奥守の姿が、光と闇の分かれ道で光を選ぶ、大きな指針になったのかな、と。
先週一話使って『審神者の刀』であることを選び取った陸奥守は、自分がかつて歩んだ迷い路にいる兼さんを前に、かなり引き締まった表情をしています。
もし時間遡行軍のように、私情で歴史を書き換える選択をしていたら、その場で切ることも躊躇わない覚悟だったのかもな、と少し思いました。
ただイチャコラするのではなく、そういう想いの遂げ方も『士』たる刀剣男士の絆には含まれるのかなぁ、と。

幸運にして、あるいはここまでのグダグダ道を踏まえて、兼さんは刀剣男子であり続けることを行儀良く選びます。
まーここに来てなお『でも自分土方LOVEだし……死んでほしくないし……』とやられたら、見てるこっちも困っちゃうしね……そういうのは今回、国広の仕事だからマジ!
空気読んで良いタイミングで登場した大太刀さんと二人で戦うシーンは、第6話で実現しなかった手合わせのリベンジのようでもあり、第5話でボッコボコにされた敗北の埋め合わせのようにも見える。
あの時とは違う種別の大太刀ですが、蜻蛉切さんの命を獲りかけた『大太刀』は強さの象徴でもあり、それを乗り越えることで第二部隊の、むつかね凸凹コンビの変化と成長を見せる場面だと言えます。
二人の戦いが光に満ちた大路で堂々行われ、それを国広は物陰から見守る構図なのは、『既に乗り越え、恥じるものが何もないもの』と『今まさに悩み、薄暗い思いを見つめるもの』の対比であり、第8話で見せた第一部隊-第二部隊、ベテランエリートたち-新兵骨喰の対比にも似ていますね。


大太刀との立ち会いで夕日の赤が消え去り、黒い闇の中で梅花が光る。
そんな中、国広は己の中に湧き出した感情を吐露し、兼さんに共感を求めます。
ここでのやり取りは非常に不器用なすれ違いに満ちていて、無敵のコンビらしからぬシーンだからこそ、国広が追い詰められ、兼さんが乗り越えたものの大きさを感じさせます。

忠義を尽くし、規律を重んじ、大きな流れを返ることは出来なくても己の生き様を貫き通す。
兼さんが口にする土方歳三の姿は、これまでリーダーの責任に悩み、誠実に筋を通してきた兼さん自身に強く重なります。
不器用ながらも鮮烈に生き抜いた『元の主』への憧れがあればこそ、兼さんは第二部隊を率いる重責をしっかり背負い、己もあのような長になろうと頑張ってきた。

それを一番側で理解していたはずの国広は、兼さんの言葉の奥にある情、自分と同じ魂の赤い血に気づかないまま、孤独を深めていきます。
兼さんの不器用なツンデレっぷりを見事に補い、第二部隊を組織として成り立たせていた国広の気づいかい、視野の広さというのは、心の天秤がバランスを失った現在、忘れ去られてしまっている。
まさに『我を忘れている』状態なわけですが、兼さんも陸奥守も、他の刀剣男子も多かれ少なかれそういう状況があったからこそ成長できたわけで、今回国広にその番が回ってきたってことでしょうね。

艶やかに咲き誇る梅の花言葉は『高潔』『忠実』『忍耐』
まさに今回問われた刀剣男士の宿命そのものであり、これに答えを出せた兼さんと、未だ答えを見つけられない国広は、歴史の闇に咲く紅白梅花といったところでしょうか。
幸運にして、花は見どころ未だ盛り。
散る前にその使命を思い出し、国広には己の志を咲かせ直してほしいものです。


兼さんたちは龍馬を守り、新撰組に立ち向かうべく光の側に進み、国広は背を向けて闇に進んでいきます。
離別を思わせるシーンですが、僕個人としては国広がバランスを取り戻し、道を返ってくるんじゃないかなぁと思って(願って)います。
理由はいくつかあるんですが、一番大きいのは第3話での描写です。
陸奥守が『命』の意味を考え直し、浪士という存在への理解を深めた対話の場所に、国広もいた。
あそこで陸奥守が受け取り、自分の迷いを第9話で晴らす足場になったモノを、俺達の国広が忘れているってのは『無い』だろうと思うんですよね。

『生命』は『天命』を悟り、散ることを前提に咲き誇るからこそ美しい。
逆しまには流れぬ時の河の宿命に逆らい、それを踏みにじろうとする時間遡行軍から、誇りを刃に、想いを盾に戦っていく刀剣男士の定めは、既に国広の中にも刻まれている。
だからこそ、これまで兼さんが戦い、迷い、答えを見つける時ひっそりと側にいて、誰よりも強く隊長を支えてこれたわけで。

人間とは違う時間を生きつつ、だからこそ当たり前の人の生き方を守ることが出来る刀剣男士。
時間を飛び越え、歴史の結末を知る大いなる力は、常に大いなる責任と隣り合わせです。
刀剣であり、人間でもある刀剣男士はみな、熱い情と重い使命の間で悩みつつ、部隊の仲間と、あるいは有限の時を生きる人間との交流に支えられて、自分なりの答えを見つけてきました。
兼さんが、あるいは陸奥守や第一部隊が辿り着いたその場所に、国広が戻ってこれる材料は、これまでの物語の中で既にたっぷりと示されていると思います。
第4話で彼が思いを馳せていた『土方歳三が守りたかったもの』をもう一度思い直せば、過剰な『生命』への思い入れを正し、『使命』と『主命』に帰還する道は、自ずと開けるんじゃないでしょうか。

あとまー、アイツ良いヤツで賢く優しいヤツだからさ、今は迷ってるけどもちゃんと帰ってくるよ。
これは信頼でもあるし希望でもあるんですが、国広がクソ虐殺者の時間遡行軍と同じ決断をしちゃうのはあんまりにも寂しいし、哀しいことなんで、あって欲しくないってのが本音です。
このアニメ見るうちに、俺国広のこと好きになっちまってるからさ……苦しい迷いをくぐり抜けて、より国広らしい国広になってくれると良いな、と思います。
色んなキャラがそういう道を経て成長することを、このアニメは寛大にも許してくれているし、推奨もしていると思うんで。


というわけで、維新志士・坂本龍馬新撰組鬼の副長・土方歳三の奇縁を後景に、第二部隊構成員それぞれの迷妄と決意を描くお話でした。
いつもニコニコしていた国広がドン曇りするのは見ててしんどかったですが、その思いは光から生まれた闇、篤い情故に生まれた妄念だと思います。
刀が切り裂くのは敵の体だけではなく、己の迷い、不確かな未来でもあるのなら、刀匠堀川自慢の一刀はしっかり、剣閃の先に己を見つけなおしてくれるでしょう。
はよう帰ってこい、国広。

散々乙女迷路で迷ってた兼さんが、しっかり『自分の答え』にたどり着くタフさを見せたのも良かったですね。
みんな悩んで、自分なりに決めて、刀剣男子として強くなっていく。
繰り返し示唆されてきた付喪神のライフサイクルを、兼さんがしっかり果たしていると証明したことで、今まさに同じ道を歩きつつある国広も良い結末にたどり着けるという、希望が残りました。
これは前回自分の物語に決着を付けた、陸奥守の頼もしさも同じ。

このように様々な段階、様々な思いが一つ場所にまとまって描かれることで、部隊としてひとまとまりに存在し、繋がっていることの意味はより強く、僕らに届いてきます。
重い空気を跳ね飛ばすように、話題を変えてくれる鶴丸のありがたさ。
さりげない描写の中で存在感を示しつつ、物語はさらなる佳境に進んでいきます。
優しい国広が、薄暗い闇の中で『己の答え』に出会い新たな光に飛び出してくれることを願いつつ、来週を楽しみに待ちます。
んー、おもしれぇなぁこのアニメ。